野生の証明

数年前、仕事でオーストラリアに行ったときのこと。わけあって数人のロケ隊で撮影しながら夜の草原を進んでいると、たくさんのエミューを見かけた。エミューとは、ダチョウによく似たデカい鳥である。人に慣れているそのエミューたちは遠巻きにオレたちを見ていたのだが、突然そのうちの1羽が我々に近づいてきた。そのとき我々はわけあって草原の中を身をかがめながら進んでいたのだが、近づいてきた1羽のエミューは中腰で進むオレの背後に迷わず回りこみ、ピタリと密着した。驚く仲間たちの目の前で、そのエミューは腰を振りだしたのだ。つまり交尾しようとしたのである。スタッフたちの忍び笑いの中、そのエミューは腰を振り続け、30秒ほどでクエクエと鳴き声をあげてオレの後頭部を数回突っついた。絶頂を迎えたのである。それで満足したのか、エミューは夜の闇に消えていった。これはギミックでもアングルでもなく、我々がまったく予想せざる出来事だった。オレはエミューにレイプされた男になった。
なんでこんな話を書いているかというと今滞在している家の近所に犬がいて、犬が非常に好きなオレは当然頭をなでてやろうとするのだが、その犬はすっかり発情してオレを相手にのしかかり、腰を振ってくるのだ。けっこう年を食った牡犬で、その姿にはちょっと物悲しい気持ちにさせられる。何度かそういうことが続いたのでなんとなく気まずくなり、オレはいまやその犬を避けるようになってしまった。不思議なのはその犬は他の人間には一切発情しないくせに、オレが近づくと俄然ハアハア言って腰を振ってくるということだ。心なしか、犬がオレを見る目も潤んでいるようである。思い起こせば、今回に限らず今までのオレの人生の中ではオレに発情する犬が時々登場してきた。オレは数年前のエミューを思い出した。あいつも数人のロケ隊の中で迷わずオレを選び、背後にくっついてきたのだ。やつらを興奮させる何かが、オレにあるのだろうか。何の役にも立たないこの能力が、いつか決定的な瞬間でオレ自身を救ってくれるのだろうか? 動物を発情させる超能力の持ち主として、オレは近々X-MENにスカウトされるかもしれない。X-MENになれたなら、少しは人間の女性にもモテるだろうか?