「指輪物語・王の帰還」

例によって感想はそろそろ復活するであろうCinemaScapeに書くので、どうでもいい話を。結局「王の帰還」まで戸田奈津子で押し通したヘラルドのやり方は、やはりオレには理解できなかった。そりゃあ普通は、三部作の統一感を保つためには訳者も連投した方がいいと思う。でもこの訳者ではダメだってことは、「旅の仲間」でとっくに判っていたことだ。誤訳も勘弁してほしいが、あの人の訳文には決定的に品格というものが欠けている。「指輪物語」をやれる人ではないのだ。誰にでも向き、不向きというものがある。それは恥ではない(誤訳は恥だが)。世間的には字幕の第一人者と目されている人なんだからここはひとつ大人になって、己を知って引くところは引いてほしかった。それ以上に、彼女に続投させたヘラルドには強い不信感を感じた。正直言って憤った。
もうひとつ感じたこと。こんなことを書くのは心苦しいのだが、劇場で映画を観ていながら、オレは心のどこかで秋に出るであろう長尺版のDVDを意識していた。少し性急な展開があるたび、あっこれは長尺版ではどうにかなってるんだろうな、という思いが脳裏を掠めた。こんなことは「旅の仲間」でも「二つの塔」でもなかったことだ。しかし二度あることは三度あると申します。「今観ているものがすべてではない」ということを、この3年間でオレも学習してしまったのですね。それは、やっぱり少し悲しいことだと思いました。
★5。