お前20年後もオレンジレンジ好きなのかよ

ちょっと前、職場に「わたし桜庭好きなんですよ〜」と言ってた女がいた。そいつはPRIDEの桜庭しか知らず、PRIDEさえ毎回見ているわけではない。グレイシーの名前は辛うじて知っているが、桜庭と90分やったグレイシーがホイスなのかホイラーなのか、はたまたホイラーなのかカーウソンなのかも知らぬ。ただテレビでバラエティーに出ている桜庭を時々見かけただけなのだ。あるとき会社でオレが桜庭が表紙の紙プロを読んでいたところ、そいつが話しかけてきた。
「あっ、桜庭だ。わたし桜庭好きなんですよ〜」

てめえ
誰に向かってそんな口叩いてんだ?

オレがはじめて桜庭和志を見たのはU.W.F.インターナショナル。ちなみにU.W.F.インターのUはユニオンのUであって、ユニバーサルではない。その意味が貴様に判るか。Uが失われた意味が判るか貴様に。シガケンチックな体だった当時の桜庭は、インターでは高い評価を受けていた若手だったがいかんせん顔がしょっぱくて人気は一切なかった。新日との対抗戦でもパッとせず、人気は一切なかった。インター末期に田村と好勝負をしていたものの、インターが潰れた後はキングダムに所属、過激なルールで試合を重ねていたもののゴールデンカップスのように外貨を稼いでくることもなく、人気は一切なかった。そしてUFC-JAPANでマーカス・コナン・シウヴェイラを破り優勝、「プロレスラーはホントは強いんです」のマイクで人気沸騰したが相変わらず顔はしょっぱかった。彼のしょっぱい顔と気の抜けた言動こそが桜庭を新時代のスターにさせたんだとオレが気づいたのは、ずいぶん後になってからだった。ちなみに貴様は知らんだろうが桜庭に敗れたコナンはその後こうなった。
http://www.boutreview.com/data/news/030703foreign-mma-topics.html

「わたし桜庭好きなんですよ〜」、それってオレからすると「好き」でもなんでもない、となる。しかし世の中にはこの程度の「好き」が溢れていて、この漠然とした世間をなんとなく動かしているのは実はこの程度の「好き」なのだ。オレはそんな「好き」を、ビタ一文信用できないんだ。
オタクの過剰さを見下ろして笑えるのは、自分の評判を落としてでも何かを過剰に好きになったことのない人々、何かを過剰に好きになれない人々だ。そしてそういう人々が、世間の大半を占めているのだ。確かにオタクはうんざりするほどモテない。しかしオレは「オレンジレンジいいよねえー」なんて言えないし、そんなことは口が裂けても言いたくない。