「地上最強への道―大山カラテもし戦わば」

地上最強への道―大山カラテもし戦わば (ちくま文庫)

地上最強への道―大山カラテもし戦わば (ちくま文庫)

昨日読んだ「武術への招待 (宝島社文庫 (492))」では、甲野先生は「筋力任せではなく、精妙なる動きで術を極めるべし」などと深遠なる武道の術理を論じられていた。
今日読んだ「地上最強への道―大山カラテもし戦わば」では、大山倍達総裁は「キミィ、カラテもパワーをつけなきゃダメだ! パワーがなければ外人には通用しない!」と熱弁をふるっておられる。あんたらなあ、いったいどっちやねんと。
答えは簡単、これはどちらも正しいのである。甲野先生は武道思想と文化部男子精神の人である。精妙なる術理を極め、術によって相手を制するのが武道だ。そして、修行とは苦痛であってはならぬ。無意味な反復練習はやるべきではない。「正しい基本」なんて幻想にとらわれるな。これは文化部男子の自由なる精神だ。
大山総裁は近代思想と体育会系男子精神の人である。カラテの技術は秘伝にあらず、世界中の人が平等にカラテを学べるようになるべきだ。「This is Karate」&「What is Karate?」は世界のベストセラー。そして外国人がカラテの技を覚えたらパワーで劣る日本人は勝てなくなる、だからこそ常軌を逸した激烈なる修行を乗り越えパワー溢れる超人たれ。これは体育会系男子の明快なる論理だ。
オレは「古武道と近代空手、どっちが強い、どっちが正しい」といった単純比較論にはあまり興味がなくて、この両者の思想の違い、その思想に至った歴史、思想を背負った各々の人生にこそコーフンするのである。美しいと思うのである。だから両者を矛盾なく尊敬できるのだと思う。まあでも、ノアだけはガチなんですけど。