「ももへの手紙」 ブルーレイはきれいだな

劇場で観逃した「ももへの手紙」を、ブルーレイで観た。うーん、期待が大きすぎたのかもしれないが、惜しいと言いますかなんと言いますか、いい映画になりそこねた感じだった。以下感想。

ここには何か芯のようなものが宿っていないと強く感じる (★3)
当代のスーパーアニメーター達が手がけた作画は実に見事で、少女の細かい仕草をフェティッシュに描き込んでいる。彼女の華奢な骨格や僅かな体の重み、走る脚もとの危うさや走った後の体温の高さまで感じられるような気がする。これは決してオレが少女を性的な目で見るド変態だからというわけではなくて、「千と千尋の神隠し」も手がけた作画監督安藤雅司の確かな力量ゆえのことと思う。

にも関わらず、この「もも」という少女は観客から遠すぎて、2時間かけて彼女と仲良くなれたような錯覚さえ感じさせてくれない。そもそもこの少女が「どういう子なのか」を映画は最後まで明快に伝えてくれない。精緻に再現された瀬戸内の風景には、潮の香りが匂わない。物語と画面は、好もしい要素で埋め尽くされているのに。

これは明らかに監督の責任であろうと思う。この映画は彼女の「リアクション」を描くことだけに終始しているのだ。じーっと観察するばかりで、全然、彼女の内面に踏み込んでいかない。終盤にやっと台詞として語られる彼女の思いは、他人事で終わってしまう。劇中にハッとさせられる描写はたくさんあるのに、それらはあくまで現象の描写にとどまっており、人間に届いていないように感じた。のめりこむのが怖いのか判らないが、実にもったいない映画だと思う。