ネタバレ「LOOPER ルーパー」感想

東洋一のクソシネコン新宿バルト9で「LOOPER ルーパー」を観てきたのだが。

映画よりも、上映前に流れたバルト9のプロモーションCMの方がはるかに衝撃的だった。

「アタイをバルト9へ連れてって〜」という珍妙な歌にのせて、バルト9の従業員の男女の恋愛がサル芝居で描かれる、たっぷり4、5分はあろうかというクソCMだ。ロケ地はバルト9。こんな犬のクソを客に見せるとはどういう了見なんだ。明白にオレに喧嘩を売っているのである。映画泥棒のCMで頭ごなしにドロボー扱いされても耐えてきたオレ様だが、これには激怒した。メロスは激怒した。もう金輪際バルト9には行かぬ。というより、恐ろしくてとても行けねえ。ただ普通に映画を観たいだけの善良なる観客ことオレを、この劇場はいったい何の権利があって愚弄するのだろう。金払って映画を観にきてこの仕打ち。くやしいのうくやしいのう

というわけで、以下はまったく心穏やかではない状態で観た「LOOPER ルーパー」の感想。すべてバルト9が悪いのです。ネタバレ全開なので、観た人だけどうぞ。といっても、観てない人には何がなんだか判らぬ文章でしょうなあ。

大人はガキンチョを正しく導かねばならぬのでアールときたもんだ (★3)
SFとしては極めていいかげんな作品で、ロジックよりも意外性やショック描写を露骨に優先させている。だからこの映画への評価は、観客の好み次第という他ないと思う。散見されるハイセンス絵本な描写、びっくりどっきり演出が気に入るかどうかだろう。オレもルーパー組織を相手どったブルース・ウィリス無双は楽しかった。確かに力作だと思う。しかしそれでもオレにとってはどうにも気に入らない点があり、ちょっと見過ごせない気分なのです。

それは何かと言いますと、やはり西洋人は根っこのところで子供=不完全な大人=人間未満だと思っているのだなーと感じてガッカリしたのである。この物語からは、正しく導かれずねじ曲がったガキは長じて悪魔になるに決まっているのでアールという信念のようなものを感じるのだ。ゆえに大人はガキンチョを正しく導かねばならぬのでアール。それがよりよい未来をもたらす唯一の道なのでアール。

わたくしの東洋人感覚では、大人よりも子供さんのほうがよっぽど神さまに近い存在なのだ。クライマックスにおけるジョゼフ・ゴードン=レヴィットの行動は、まったくいただけない。お前バカなんじゃねえのとさえ思う。なにも死ぬこたあねえ。オレでも思いつく簡単なその場しのぎは、自分の指を食いちぎることだ。タコ坊主はトリガーを引けない。

ガキのトラウマ回避すりゃその後の人生安泰だろうなんて後ろ向きな解決に、いったい何の正義があるんだよ。どこにカタルシスがあるんだ。あんな自殺は自己満足でしかない。無責任ですよ。あれであのガキが悪ボスにならない保証なんかねえんだからな。レインメーカーはレベルが違うんだよ、カネの雨が降るんだぜ。だいたい、タコ坊主なんか超能力でブッ殺したって全然かまわねえよ。どうせダイ・ハードなんだから簡単には死なねえよ。

若ルーパーがなすべきは、ガキにきちんと向き合って対話することだろう。お前がしたことは正しい、お前は母親を守った、お前には大きな力がある、その使い方を考えよう。サーみんなで考えよう! さんをつけろよデコスケ野郎!

ま、あんなろくでもないヤク中にはちょっと難しい注文だったかもしれん。だからこの映画、なんだかたくさんのバカどもが右往左往してるだけのようにも見えるんだよなあ。中でもルーパー狩りを失敗しまくる悪役の兄ちゃんが、いちばん愛せるバカだった。あいつが空飛ぶバイクでブッ飛んできた瞬間が、この映画のピークだったと思います。