「モンスターズ 地球外生命体」

モンスターズ / 地球外生命体 [Blu-ray]

モンスターズ / 地球外生命体 [Blu-ray]

まもなく公開される新作ゴジラを撮ったギャレス・エドワーズ監督のデビュー出世作「モンスターズ 地球外生命」を観ましたよ。実はテレビ東京の午後ロー(午後のロードショー)でやってたのだけど、予約録画に失敗したのでDVD借りてきました。うちのHDDレコーダー、ごくごくたまーに録画に失敗というか「録画終了に失敗」して、RECの赤が点灯したままフリーズ、再起動しても録画できてないなんてことがあるんだよなあ。以下、CinemaScapeに投稿した感想。ネタバレです!

それなりによく考えられた映画で決して悪くないのだが、悪くないで終わっている。好きじゃあないな。(★3)
この映画は総じて怪獣との遭遇場面に力がないのである。そこに力を入れずにどうすんのと思うんだけど、この映画の場合それも当然といえば当然で、劇中で描かれるのは怪獣登場から6年後の世界なのだ。誰もが怪獣のことを知ってるし、どれほどヤバくてヤバくないのかの按配も心得ており、怪獣はアニメや落書きアートに描かれ、すっかりアイコンとして消費されているおなじみさんだ。怪獣の情報を与えられていないのは我々観客だけだが、登場人物たちの先刻ご承知のしたり顔を見せられ続ける情報格差を乗り越えてなおドキドキできるほど観客は純情ではない。怪獣映画が終わったところから始めるというのもひとつの面白いアイデアだろうが、結果としてこの映画の怪獣は「危険な野生生物」以上のものではなくなっている。ゆえに遭遇それ自体にショックはなく、川の戦闘機の場面の如く現象の面白さでしか目を惹けない。せめてもの怪獣映画らしさが、終わる世界の廃墟めぐり。廃墟マニアの皆さんにはオススメです!

さらに野暮なことを言うならば、たかだかお嬢さんの里帰り程度の旅なんだろ。ご丁寧に赤く塗られた「危険地帯」を通る選択は極めて不自然で、港湾の封鎖解除を辛抱強く待つか、地球を反対周りしてでも安全なルートを選ぶべきだろう。常識的な大人ならそうする。誰だってそうする。オレもそうする。

遭遇場面と対照的に光っているのが人物の生理の描写だ。モーテルで飲む冷たい水、民家で食う大判焼き、露店で食うメキシカンメシ。ヤローどもは誰ひとりションベンしたいとか言わないのに、別嬪さんのヒロインは劇中2度にわたって野ションを敢行。監督いいご趣味してますねウヒヒと思っていたが、人間の動物としての生理現象を見せておいたことがラストにおけるヒロインの本音に直結する。人間は動物であり、飲み食いせずにはいられず、小便せずにはいられず、求愛せずにはいられない。ラストでの怪獣との邂逅は、本来の人間の姿を彼らに見せるための鏡として機能するという仕掛けだ。はい、というわけで題名のモンスターズとは実はこの男女、我々人類、わたしでありアナタのことなんですね。まあ、こわいですね。なんともしれん、非常によくできた仕掛けですね。まあ、でもわたくし、結局怪獣は刺身のツマかいとガッカリせざるをえなかったんでありますよ。