驚愕の大傑作「ザ・レイド GOKUDO」

前作「ザ・レイド」の感想がこれ。

「ザ・レイド」の確固たる思想 - 挑戦者ストロング

さて今さらながらBDで続編「ザ・レイド GOKUDO」を観て、その大きさ深さ、大胆さ細やかさ、極限の完成度に仰天した次第。これ観なきゃダメだよ人類。以下感想。

ギャレス・エヴァンスの長編三作目は、すでに巨匠の作品だった。絶対に枯らしてはならない才能だ。(★5)


貧乏映画「ザ・レイド」で見事な才能を示したギャレス・エヴァンスは、予算が増えた今作で堂々たる傑作をモノにした。長編映画は三作目とのことだが、はっきり言ってこれはすでに巨匠の作品だ。脚本、撮影、擬闘、すべてが極限のハイクオリティにある。特に素晴らしいのは監督自ら手がけた編集だ。意味をより明確に示すための時制いじくり、「この後起こること」がチョチョシビリと漏れ出てくるフラッシュフォワードの奔流。RINGS中継のような真俯瞰カメラ、ファーストカットの如き大ロングがたびたび出てくるが、これらとて確信に裏づけられた編集なくして使いこなせるものではない。轟音と静寂の緩急を自在に操る音響も素晴らしい。


ボケが撮ってりゃなんにも印象を残さないであろう数多の脇役に至るまで興味深い造形がなされており、潜入捜査ものだったこの映画は徐々にインドネシア黒社会の群像劇の様相を呈してくる。このへんの手つきがもう完全に巨匠のそれなのである。例えばマフィアの親分バングンには息子思いの好々爺としての一面があり、釣った魚を川に返してやる優しさを見せる。同時に別件で始末した死体も、一緒に川に投げ込まれる。ここで得意の大ロング。ああ、これが映画なんだと溜息が出るような場面だ。大いなる意味を画で見せる、こういうやつがこの映画にはたくさんあるんだ。


カーチェイスの場面で、信じられないカットがあった。主人公が連れ去られる車を猛スピードで追跡する好漢エカの車の中を、カメラが通り抜けるカットだ。あんなものを見せられては、脱帽するしかない。現代日本映画との実力差には、もはや呆然とするしかないよなあ。