HAL9000の足元にも及ばぬ「エクス・マキナ」

なかなか映画館に行くヒマがなく、しかし観たい映画だったので輸入ブルーレイを買った。

すぐれた低予算SF映画という評判だったので、ストイックでガチムチなSFを期待していたのだが… ある意味では、オレが大嫌いなナンチャッテSF映画ガタカ』あたりと大差ないのかもしれない。ビジュアルのイメージは完全に空山基だよな。ザ・ヒューマノイド

なにしろエヴァちゃんが魅力的なのだが、それがかえってSFを映画でやることの限界を感じさせる。(★3)
「SFは絵だねェ」との野田昌宏大元帥のお言葉があるけれど、わたくし思うに絵じゃないSFも確かに在って、しかしこと映画となると「SFは絵だねェ」で作らざるをえない。これは映画の限界だよな。

たとえばこの映画でエヴァちゃんがブサイクだったら、そんなもんお話になりません。オレだって観ねえ。だからエヴァちゃんが美人なのは正しい。正しいんだけど、やはり「絵じゃないSF」への可能性を失ってるんだよな。人工知能と人間、なんて物語は堅牢なロジックをひとつひとつ積み上げ、それを時に崩したりひっくり返したりして我々の「知性」を根底から揺さぶってほしいのである。しかしこの映画はエヴァちゃんが美人であることを選び、ITオタクの童貞がオリエント工業ラブドールにドキドキ! みたいなしょーもない話にしてしまった。いや、しょーもない話も大好きなんですけどね。

つまり、人工知能をガチンコで考えた映画というようには到底思えないのである。スピルバーグの『A.I.』もそうだったが、表向きには人工知能を扱いつつも、描かれるのは結局作り手自身のテーマであり内面だ。それが悪いとは言えない。言えないけれど、せっかく人類が別種の知性と出会う「ファースト・コンタクト」なんだから、もう少し真剣にアレしていただきたかった、というのもわたくしの偽らざる本音なのであります。