地獄はすぐそこ 「孤高の遠吠」

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TSUTAYAレンタルDVD 「孤高の遠吠」

これは凄かった。これ作った監督が24、5才の若者だそうですよ。機材や編集ソフトが高品質で安くなったこの時代、アニメも実写もやる奴はやる、やらない奴はやらないという言い訳無用のやったもん勝ち時代になってしまったなあ。この才能とやる気は凄いわ。これ傑作だろう。まーでも、何度もは観たくないなあ。だってオレがいちばん目をそむけていたい、こわい内容の映画だからなあ。

心底恐ろしい「田舎は地獄」映画。(★4)
「田舎は地獄」映画というジャンルがあるわけではなくて自分が勝手にそう呼んでいる作品群があるだけなんだけど、それはたとえば「脱出」(ジョン・ブアマン)、「悪魔のいけにえ」、「サザン・コンフォート」、「わらの犬」、「ブレーキ・ダウン」、「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」などといった、話の通じない人たちが出てくる怖い怖い映画たちのことである。

「孤高の遠吠」は、2時間の地獄体験と言っても差し支えないと思う。外国映画で観る田舎とは違って、この地獄の淵はわたくしのすぐ隣にあって、いつ奈落に落ちていてもおかしくない。まず、それが恐ろしい。次に恐ろしいのは、この地獄の亡者たちが自分が地獄にいることを知らないということだ。目隠しをして生きているようなものだ。富士宮市が世界で、富士市が異国なのだ。

自分にとって、「ずっと地元で暮らす」ことの恐ろしさは言葉にできない。オレは本当に怖い。ド田舎には、生まれた土地から出たことのない人だっている。そんなことは知っていた。いや知っていたつもりだったが、その恐ろしさをあまり考えないようにしていたんだ。本当のド田舎ならまだいい。富士山の麓なんて、日本の真ん中じゃないのか。日本全国どこにでもあるロードサイドの画一的な風景。シャッター商店街。ショッピングモールのゲーセン。ドンキの駐車場。どこにでもあるありふれた風景が、実は地獄絵図だったことが判明する。これは怖い。勘弁してほしい。

超怖かった暴力映画「ヒーローショー」を思い出す。あれも二度と観たくないくらい怖い映画だったけど、暴力の連鎖という「現象」の怖さを見せる映画だったように思う。一方で、「孤高の遠吠」で生じる「現象」は結構ショボい。本物の不良&本物の元不良が演じる擬斗は残念ながら素人丸出し、パンチもキックも当たってないし血糊はなんだかフルーティな色合い。しかしこの映画の肝は現象じゃないんだよな。そこに至る「理由」或いは「理由の軽さ」、ひどい場合は「理由の欠如」が恐ろしいんだ。つまりですね、このようなリアル不良オールスターズ出演、道交法ガン無視のゲリラロケ、デジカメの安っぽいルックにも関わらず、この映画はなんと我々を締めつける「社会」の構造を描いているのである。だから怖いんである。この社会は現代のこの国の至るところに存在し、自分に近しい恐怖として受け取らざるをえないからだ。どうすんだよ自分の家にウメモトジンギさんとか来ちゃったら。ヤバすぎんだろ。

冒頭、少年はこっそり静かに家を出る。原チャリでニケツして、夜の街へ。この場面はとても美しく、詩情に溢れている。だからこの後の2時間で、本当に胸が苦しくなるんだよなあ。