「ひるね姫」で出たヘドを

ひるね姫 知らないワタシの物語」をブルーレイで観た。ま、評判もあまりよろしくなかったこの映画を観た人も少ないのでしょうが、これが実にひどい作品で、早速怒りの感想を書いたものの、先日からCinemaScapeが落ちており投稿できない。はてなダイアリなんかに酷評を載せると以前の「スカイ・クロラ」の如くプチ炎上してめんどくさいことになるかもしれんのだけど、まあ押井守作品に比べりゃファンも少なかろう、と思ってここに載せる。一応ネタバレありますが、もはやネタバレとかいう問題でもあるまい。

ヘドが出ます! 大っ嫌い!!(★1)
冒頭の夢世界から、「未来少年コナン」や「ルパン三世カリオストロの城」の引用ともパロディとも判然とせぬ不出来な模倣が満載でビビる。夢のシーンは総じて「ロボットカーニバル」の貞本パートや「エヴァンゲリオン」などなど、かつて観たアニメの記憶が呼び戻される既視感で埋め尽くされている。「ベイマックス」に関しては、まーデザイナーが同じ人らしいので仕方なしと目を瞑ろう。しかし夢世界なんて、いちばんオリジナリティ出さねばならんところじゃないのか。画面に映るものすべてがパッとせず、何の印象も残さない。

いちいちストレスが溜まる気持ち悪いコンテにも、盛大なる文句がある。見たいところを見せず、構図やカメラワークはおしなべて気持ちよいポイントを外し、アクションにはアニメーションの快楽が欠けている。一例をあげれば父親がロボに乗って自転車のペダルを力いっぱい漕ぐシーンで、下半身を一切見せない。おい、こんなもん有り得ねえんだよ。ゴミ箱直行のコンテだ。オレでも判る。誤解なきように書いておくと、作画はさすがIG系列、スーパーアニメーターたちがいい仕事をしているのである。ゆえにこのザマ、監督の力量不足としか言いようがない。

お話は自動車の自動運転の制御プログラムをめぐる「巻物争奪戦」なのだが、ドキドキも危機感も苦労も熱意も何もない。このへん登場人物の不自然かつ不愉快な行動の数々もあまり気にならなくなってくるほど決定的に「作品世界に興味が湧かない」作りとなっており、驚かされる。

物語の中心たる「自動運転」という事象にさえ、作り手が興味や実感を何ひとつ持っていないことは明白だ。たとえば序盤で父親は、自動運転のシステムを近所の爺さんの軽トラに取りつける。このようなド田舎で決まりきった道しか走らぬジジイにそもそも自動運転が必要なのかたいへん疑わしいのだが、それにしても自動運転中の運転席さえろくに見せないとはひどすぎる。自動運転のシステム、GPSや車載カメラが環境情報を集め、コンピュータによる様々な判断がなされてのエンジン回転数、ギアチェンジ、車線、スピード、制動の選択と実行といった細部の描写は皆無である。あのさー、興味ないならはじめっから自動運転なんか口に出さなきゃいいんだし、映像で表現したい何かがないなら映画なんか作らなくっていいんだし、やる気が無いなら家に帰ったっていいんだぜ。この映画は万事この調子なのだ。なんだてめえ映画作るのイヤなのか? 無理せんでもええんやで。

監督が書いてる脚本からして不可解なことだらけで、結局自動運転ってどうなん、という疑問にさえ答えない。だって裏の主人公である母親って、自動運転のテスト中に死んどるよね。そう匂わせるだけ匂わせて、フワーとさせるだけで何のフォローもない。自動運転とは夢と希望の新技術なのか、母を殺した悪魔の発明なのか、マー何だっていいんだけど、いったい何がしたいのかさっぱり判らねんだ。「心根一つで空も飛べるはず」とかいう何がしたいんだコラと言いたくなる不明瞭なフレーズを、主人公の女の子は何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も口にする。なぜか自動車会社の社是になっている。馬鹿か。このセンスのなさ、もはや観客への攻撃だ。こんなアホみたいな台詞でも台本通りに喋らねばならぬ声優さんが気の毒だ。

自動運転とそれがもたらす未来像、要するに「人間の営為」や「社会」といったものにはまったく興味ない一方で、作り手がこの映画で描きたかったものはいったい何なのか。大雑把に言ってこの映画に登場するのは四者だ。

1.「無知で頑迷な権力者の老人」

2.「社内政治と権力闘争に明け暮れる無能な小悪党」

3.「愚かな老人のせいで冷や飯を食っている無謬のイケメン技術者の自分」

4.「自分を慕い疑わず一方的に世話を焼いてくれる味方の娘」

まともな神経なら見ちゃいられない自己愛まみれのモチーフが、工夫もなくゴロゴロ転がってて無惨だ。1.と2.はアニメ業界の誰かの集合だ。3.の自分は心ならずも都落ちしてる被害者だから、倉敷みたいなクソ田舎には一片の愛情もない。かわりに3.の名前だけ岡山テイストの桃太郎にしといてやろう。4.の娘は後半、自分の思慮深い愛情に気がついて感謝までしてくれる。天国の嫁は何でもできる天才や。娘の従者は去勢済みの人畜無害なオタクがよかろう。愚民がネット炎上して街が燃えても知りません、われは天空をゆく白馬なので大気圏突破。おいお前ずいぶんいい気なもんだな。田舎者をカモる麻雀は楽しいか?

この映画は一応、現実をお伽噺のスタイルで描くことで本質を露わにします、という体をとっているのだが、お伽噺が露わにしたのは作り手の脳内の幼児性だ。つまり現実には、被害者ヅラの父親がいちばん無能でいちばん幼稚でいちばんクソ野郎なのである。当ったりまえだろ、こんなゴミコンテ書くような監督がなに悲劇の秀才気取ってんだ殺すぞ。そういえば「東のエデン」も「009」も、オレ大嫌いだったんだよな。せめて仕事と割りきって、普通に観てストレスのないものを作っていただければ、それでよかったのだけど。今後、神山健治監督作品を観ることはあるまい。