ZERO-ONE両国大会回顧

いろいろと問題の多い興行だったが、とにかく滅法面白かった。当日券を買うため並んでいたときに、オレの後ろに並んでいた女性は「もう私にはZERO-ONE闘龍門しかありません・・・」と呟いた。マス席で相席になった、スレた若いプロレスファン3人組は「もうね、ワクワクできるプロレスはZERO-ONEぐらいですよ」と力説した。

小笠原和彦対小林昭男が素晴らしかった。思わず「K-1の100倍面白え・・・」と口走ると、若い3人組は笑いながらも同意してくれた。強い空手家が空手家のままプロレスをやることがこれほど面白いとは、ちょっとしたショックだった。昔のボクシングにはディフェンスという概念がなかったと聞いたことがある。相手の拳を一切よけず、男と男が一発ずつ殴りあい雌雄を決する。それはK-1よりも頭は悪いかもしれないが、圧倒的にセコくないおおらかな男たちによる人間比べであり、観ているオレはあまりの幸福感に頭がボーッとしてきた。そしてこういうセコくない試合をできるセコくない男たちが集まる理由は、すべて破壊王という人間の器量であろう。

セミ小川直也が殉じてみせたプロレスへの信仰も、橋本という男がいなければ存在しなかったはずの人生だ。そしてメインで長州力橋本真也のそれぞれの配牌比べ、すなわち彼らの人間比べを目の当たりにして、そこにオレが観たのは橋本という巨大な愛すべき人間の輪郭だった。この日、橋本はキックとチョップしかしていない(よく思い出してみたら、DDTと膝十字もやってた)。あれがプロレスラーである。