ムシキング・テリー

仕事場でNOAHテレビ観戦。
札幌でのムシキング・テリー、丸藤、KENTA vs 小橋、三沢、田上。
田上がムシキング・テリーをピン。
ムシキング・テリーに関して、オレはあんまり深く考えたことがなかった。彼がデビューしたNOAHドーム大会に行けなかったからだ。しかし最近になって、ようやくムシキング・テリーの凄さがオレにも伝わってきましたよ。
話だけ聞くと、かつてのタイガーマスクザ・コブラ獣神ライガーウルトラマンウルトラセブンウルフ・ホークフィールドのような企画モノとしか受け取れない。つまりガキの小遣い巻きあげてやるぜ的な企画である。この中で初代タイガーマスクだけは企画をはるかに超えたプロレスを見せて老若男女を魅了、空前のプロレスブームを巻き起こした。しかしおおむね、企画モノのレスラーの末路は哀れなものだ。子供の心を掴むということは、実は容易ではないからだ。とりわけ凄かったのがウルトラセブンで、全日本プロレスに登場するや会場での野次「高杉!」「高杉コラッ!」がテレビ中継でもバッチリ聞こえる杜撰さ。おかげで子供たちもどうやらこのレスラーには「高杉!」と声援を送るもんらしいと理解してしまい、会場ではかわいらしい子供の声で「タカスギー」と声援が飛ぶたびに大人たちが苦笑するという現象が多発、当のウルトラセブンはだんだんテレビに映らなくなってすっかりやる気をなくし無気力相撲を繰り返した挙句、ひっそり解雇されてしまった。その後の高杉はインディーを渡り歩き、なんと現在もウルトラセブンとしてIWAジャパンにフリー参戦している。版権大丈夫かよ。人生って不思議だ。
さてムシキング・テリーであるが、彼に新しさがあるとすれば「プロテクトされていない」ことに尽きるだろう。つまり、使い捨ての外人レスラーを当てて連勝させるようなことをせず、普通にNOAHのヒエラルキーの中で勝ったり負けたりする選手、そうだな例えるならばちょうど鈴木鼓太郎程度の強さの選手として、しかし子供たちのヒーローであるという前提も崩すことなく両立させていこうという意図が感じられるのだ。今日は田上にフォールされた。先日はKENTAにやられた。子供たちがムシキング・テリーを応援しても、その願いが届くとは限らない。ムシキング・テリーも万能のヒーローではないよと。強いやつには負けるよと。しかしみんなの応援があれば頑張るよと。この「子供のヒーロー」像は、プロレス界においては新しいものだ。願わくば現代の子供たちがこの方向性を支持し、ムシキング・テリーの成長を永く見守っていくようになってほしい。いつかプロレスラーとして成長したムシキング・テリーGHCジュニアを獲ったとき、応援してきた子供たちは報われるだろう。彼のことを、誇りに思うだろう。
http://mushiking.com/news/terry.html
ムシキング公式のムシキング・テリーのページである。一番下の「前回のお話を見る」から見ていくと、三沢社長もがっちり関わっているこの企画がSEGAとNOAHの間でけっこう詰めた話の上で展開されていることがよく判る。ハッスルのセイザーだのジャスティライザーだの以上に、ムシキング・テリーにはオレが応援したくなる何かがある。それは、田上には歯が立たないという現実を包み隠さず見せてゆく覚悟が美しいと思えるからではなかろうか。