「魂のラリアット」

魂のラリアット

魂のラリアット

オレが愛したプロレスラー、スタン・ハンセンの自伝。
特に胸を打たれたくだりを引用する。

鶴田の死を知った翌日の5月18日(2000年)、私は日本へ向かうロサンゼルス空港の待ち合い室で、偶然にアントニオ猪木と会った。猪木も私と同じ便で東京へ向かうということだった。猪木は私の顔を見るなり、
「ハヴ・ユウ・ハード・アバウト・ジャンボ?(ジャンボのことを聞いたか)」
と聞いてきた。私がイエスと答えると、猪木は何も言わずにただ首を横に振って床を見つめるだけだった。何と言っていいかわからない気持ちは私も一緒だった。
猪木は私の座席の三つ前に座ったので、東京へ到着するまでの間、私は猪木の後ろ姿を何度も眺め、ふと次のように考えた。
「猪木と私を含め、いまだにプロレスリングのビジネスに携わっている同世代の人間はもう数える程しかいなくなってしまった」
と。ブルーザー・ブロディも、馬場も、そしてジャンボまでが逝ってしまった。
いくらお金を稼ごうが、生きていなければそれは何の意味もない。お金ばかりではない。力も、地位も、名誉も、死んでしまっては無意味なことばかりである。
リビング……生きる、ということ!