新宿のクソシネコン・バルト9でポン・ジュノの新作「母なる証明」。
「母なる証明」公式サイト
凄まじい傑作だった。「殺人の追憶」を超えていると思う。情報ゼロで観てほしい映画なので、以下ネタバレなしで感想。
胸が動悸動悸 (★4)
火サスみたいな話を、ケタ外れのド迫力で描いて凄まじい。語り口が素晴らしい。観客の興味を満たしつつ、興味の一歩先で絶妙な按配で予測を裏切ってゆく。これ、はしゃいで裏切りすぎてもただの奇抜な映画になってしまうので、非常に難しいところだろうと思うのだ。たとえばこの監督の「グエムル」は、そこのところを失敗した映画だ。真相ににじり寄る推理、ハラハラさせるサスペンス、出し抜けに仰天させるショック。あの手この手でエモーションを振り回され、小学生みたいな物言いだが「胸がドキドキ」としか言いようのない状態に追い込まれた。
久々に感じたのは「闇」の原始的な怖さだ。空き家の闇の中から飛んでくる岩。帰宅した母親とジンテ(息子の友人)が対峙する家の中なんか真っ暗だ。こえーよ電気つけろよと思うものの、蛍光灯で煌々と照らされた明るいリビングで素人探偵が事件を得意げに語れば、これはもう火サスであり土ワイである。この映画は、豊かな陰影の中に漆黒の闇を配置し、人間を浮かびあがらせる。その人間の中にも闇がある。巧拙以前に、描こうとしているものが火サスとは全然違うのであった。
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