時には邦画の話を

宮崎あおいが可愛すぎて目撃すると死にたくなってしまう病気を患っているため、日本映画の新作をとんと観ていない。めぼしい作品には、たいがい彼女が出ているからだ。アニメはちょくちょく観ていたが、最後に劇場で観た実写の邦画作品は辻仁成センセーの「アカシア」である。いじめっ子を相手にする時はアームロックで対処せよという教訓を学んだ。テロリストになって映画館を燃やしたろうかと思ったよ。

そんな映画ファン落ちこぼれのわたくしが、久々に観たいと思った新作邦画があったのだ。「老獄-OLD PRISON-」である。主演は我らが人間国宝アジャ・コング予告編を観ていただけばお判りだろうが、ベテラン看護婦を演じるアジャ様は控えめに言ってもかなりのブサイクだ。これほどブサイクな女性が主役を演じる映画は滅多にないが、その存在感たるや圧倒的である。この映画の監督はアジャという飛び道具を実在感(リアリティ)に変換しており、それだけで辻仁成あたりとはひと味違うけっこう優秀な作り手だと思われるのだが、一方でアジャはそこらの三文役者より遥かに芝居がうまく、空気を作り出すことに長けていることを我々プオタは重々承知の助なのである。女子プロレスの至宝アジャ・コングのポテンシャルを、ついに世間に知らしめる時が来たのか…これは観に行きたいな… と思っていたら、なんと先週までで上映が終わっていた。

毎日ボーッとぼうふらみたいに生きているわたくしも、さすがにこの失態は反省した。正直、ポカした。ポカやった。ヴァー。というわけで、この失態を挽回できるような面白い映画が観たいものだなーなんて思っていたところ、友人にこのような映画を教えてもらった。

「TOURNAMENT」(公式サイト)

「本気で戦ったら危険極まりない男たち。だから、最初は脚本もあり、演出もあった。どちらが勝って、どちらが負けるのか。台詞もあった。しかし、甘かった。そんな連中が言うことを聞くはずが無い」(公式サイトより)

要するに擬闘を撮影する予定がなぜかガチの果し合いになってしまったと、映画の製作者はこう言うとるわけです。

この21世紀に、武道家同士のガチ格闘を見せてカネをとろうという寸法なのだ。この「ガチ宣言」、汚れちまったおっさんことわたくしには鵜呑みにできるわけもないのだが、これはヤコペッティの見世物映画的な「仕掛け」なのだと受けとりたい。ここはあくまで「ホンマかいな」と半信半疑の物見遊山、ワクワクドキドキしながら劇場に足を運びたいと思うのだ。果たして客席の貴族たちは銀幕に格闘芸術を目撃してUWFのクローズド・サーキットばりに盛り上がるのか。しょうもないただの不出来なアクション映画を目の当たりにしてションボリするのか。25日のバルト9はスリリングな夜になることだろう。

ということでこの映画、イヤこれをいったい映画と呼んでいいものかどうか根幹から危なっかしいんだけど、そんな山っ気たっぷりの映画だからこそ観に行きたいと思うのです。監督は国産アクション映画復活を志して気を吐く映画製作者、西冬彦。空手映画「黒帯」を観たけれど、素晴らしいアクションとグダグダの脚本という組み合わせだった。観てないけど「ハイキック・ガール!」も同様だったらしい。今回は出演した武道家たちに脚本を無視されたそうなので、むしろ西冬彦作品につきものの弱点が克服された新機軸なんだと思って、大いに期待したい。暗い世相です。ポジティブシンキングでいきましょう。