前回の記事(id:Dersu:20120503)の続き。
キャラクターの二次使用は、何もテレビCMに限ったことではない。広告、パチンコ、ちょっとした告知、キャラクター商品、カーナビの声、他にもまだまだあるだろう。どのケースにおいてもきちんとした版権処理がなされており、法的には問題ないものだ。
作品の発表と同時に商品化が展開される場合もある。ガンプラや仮面ライダーの変身ベルト、ポケモンカレーにジャスピオンソーセージ。関係ないけどジャスピオンソーセージって強烈な語感だよな。このように最初から二次使用ありきで作られる作品も、決して少なくない。
二次使用に際して、気をつけてほしいと思うことがある。キャラクターとはひとつの人格であり、作品が定める世界の中の存在である。ゆえにどうしても、やってセーフなこととアウトなことがある、ということだ。ここに気をつけているか否かで、大きな印象の差があるのではないかと思うのだ。一例を挙げてみる。
ロート製薬の、子供用目薬のCM。「ドラゴンボール」のキャラクター、クリリンだの悟飯だのがアニメで登場し、プールで泳いで目薬を差している。これはオレ引っかかったねえ。個人としてはドラゴンボールなんて好きでもなんでもないんだけど、それでも引っかかった。ドラゴンボールの世界に、目薬があっていいのだろうか。正直考えたこともなかったが、違和感は強かった。だいたい悟飯とかクリリンとか、お前らメチャ強い超人ちゃうんか。そんな人間凶器どもが無邪気にプールで泳いで(ビート板使っとる!)、あろうことか目を赤くしておるのだ。そもそもクリリンは子供じゃなくておっさんだろ。もしオレが子供だったら、全然嬉しくねえなと思った記憶がある。ロート製薬は「お子さんはドラゴンボールが大好き!このCMで大喜び!目薬バカ売れ!」と信じたのかもしれないが、雑な発想で無造作に作られたこのCMは、「ドラゴンボールの世界観」の根幹を結構な勢いで揺るがせていると思うのだ。そしてドラゴンボールに夢中なお子たちにとって、それは決して嬉しいことではないと思うのである。
なぜならばオレ自身、好きな作品やキャラクターがぞんざいに「扱われる」ことが大嫌いな、クソ生意気なガキだったからだ。自分が愛した怪獣映画やウルトラマンが「作品の外」でいいかげんに扱われるのを見るたび、怒りと屈辱に震えてきたのだ。
古い話でアレだけど、例えば三船敏郎が出ていたサッポロビールのCM。あれがもし、「七人の侍」の菊千代が白黒フィルムの映像の中でCGのビールを持たされてCMしていたら、どうだっただろう。そりゃ戦国時代にビールなんかある筈ねえんだが、そんな単純なツッコミでは済まぬ問題が生じると思うのだ。それは映画「七人の侍」の持つ迫真性への侮辱であると同時に、映画の中で確かに生きていた菊千代というキャラクターの純度を下げ、結果殺すことになると思うのだ。なぜなら、菊千代はビールを飲まないからだ。飛影はそんなこと言わない!*1
更にもうひとつ。ここまでくると単にもうオレが病気なだけかもしれないが、あのー、「名探偵コナン」とかの映画の宣伝告知、たまにやってるでしょう。ゲスト声優の安いタレントと、微妙にデカいコナン君の着ぐるみが出てきて「劇場に観に来てねー」とかやるやつ。オレはああいうのを見ると、お腹が痛くなるんだ。だって、あんなデカいコナン君がいるか。アニメと全然違うやないか。そもそも、キャラクターが自ら映画の宣伝をすることが気持ち悪い。映画は全部ウソの学芸会なんですよとゲロっているに等しい。バイト感覚のタレントも気持ち悪い。そいつらが並んでニコニコしている図は、なんだかもう縮尺や虚構の階層がメチャクチャで、悪い夢のようなんだよな。幸いにしてオレはコナン君とかどうでもいいと思っているおっさんだが、真剣に「名探偵コナン」を好きな子供たちがあれを見ることを考えると、やっぱりお腹が痛くなるのだ。アニメのキャラクターを無理やり三次元に起こすの、もうやめましょうよ… キツイんだよ… ディズニーランドのミッキー着ぐるみでさえ、オレちょっと気持ち悪いんだよ…
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- 作者:安藤 健二
- 発売日: 2011/01/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
*1:何のことか判らぬ人はググって調べてください。自己責任ですよ