「ガイア・ガールズ」

ガイア・ガールズ [DVD]
今さらながら、DVDで「ガイア・ガールズ」を。英国のドキュメンタリースタッフが制作した2000年の映画で、はじめて知ることなんか何ひとつ出てこないけど、なかなか大したもんでした。道場で日常的にカメラを回す中で、団体側との「これは撮るな」的なせめぎ合いもあったのだろうなと想像する。以下、CinemaScapeに投稿した感想。

これが若さか (★4)
人生経験の少ない平凡な少女を過酷で理不尽な状況下に囲いこみ心身ともに追いつめることで、眠れる潜在能力を爆発的に引き出して輝かせる。それは全日本女子プロレスが長年かけて確立したシステムで、女子プロレスの魅力の大きな部分を占める要素だ。程度の差こそあれ、同様のことは軍隊の新兵訓練、自己啓発セミナーの合宿、宗教団体の洗脳、ブラック企業の研修、近年のアイドル産業などでも行なわれている。広く捉えれば、子供が「一人前」になるために必要とされる理不尽な通過儀礼は世界中のあらゆる文化に存在する。新社会人だって、多少のキツイ目に遭ってそれらしい職業人になってゆくものだ。ことの善悪を置いて、世の中はそのようになっている。しかし好き嫌いで言うなら、ぼかー嫌いです。なるべく辛い思いはしたくないし、理不尽な仕打ちを受けて泣きたくもない。そういうのは極力避けて生きていきたい。ちなみに、こういうことを言うやつは立派な大人ではありません。

全女の底辺から頂点に登りつめた長与千種は、「スターを作る」うえでそれが絶対に必要であることを知り尽くしている。だからモンスター・ファクトリーたる「道場」は、この映画のようなことになる。いや、この映画で描かれる少女たちなんかみんないい子ですよ。普通はもっとひどいんだよ、ひどいらしいよ、ひどいって聞いたことあるよ。論理的に考えてプロレスの道場とは理不尽なイジメ、暴行、苦痛、殺意が横行する鬼の巣だ。そこを生き残ってきた「尋常じゃない人たち」が、プロレスラーと呼ばれることになる。

上記の如くそのような目に遭いたくないことにかけては全日本レベルの僕ちゃんであるが、同時に人としてうしろめたさを感じずにはいられない。そして、追いこまれた経験だけが人間にもたらす能力の開放、限界の突破、その眩い輝きに観客として惹かれるのも事実だ。

これほど頑張ったためしもなく頑張りたくもないわたくしに、この視野の狭いブサイクな少女たちの輝きは眩しすぎる。切ないような悲しいような羨ましいような嬉しいような、ちょっと形容しがたい気持ちになるのです。これが若さか。サボテンが、花をつけている…

もっとマシな批評が読みたい方は、ネタバレありますけどこちらを。
CinemaScape/Comment - 「ガイア・ガールズ」 Myurakz
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