老いらくの殴り合い「リベンジ・マッチ」

グリフォンさんのご指名(id:gryphon:20140403:p1)を受けたから、ってわけでもないのですが、映画「リベンジ・マッチ」の感想です。原題は「Grudge Match」、要するにまー遺恨試合ですな。

リベンジ・マッチ [Blu-ray]

リベンジ・マッチ [Blu-ray]

なかなか楽しい映画だったのだが、ある一場面が実に感慨深かったのでご紹介。老いた元ボクサーであるスタローンとデ・ニーロが、自分たちの遺恨試合の宣伝に訪れたのが現代MMAの頂点、UFCの会場なのですね。そこで2人はMMAに対する印象を述べ、ひと悶着あるのである。


老いぼれボクサー2人が、UFCの会場で宣伝する場面が非常に興味深い。(★3)
時代遅れのアメリカン頑固オヤジである「レーザー」シャープ(シルベスター・スタローン)とビリー「ザ・キッド」(ロバート・デ・ニーロ)、2人にはMMAがまるっきり理解できていない。男の喧嘩は拳で殴りあうだけだと思いこんでいる、ジョン・ウェイン世代として描かれている。マッチョがくんずほぐれつする現代MMAがオカマのように見えるというのも、強烈な「男らしさ」の抑圧を受けて育った頭の固いロートルオヤジの発想だ。とはいえ実際にはこれ映画らしいデフォルメであり、現実には「キックは女の武器だと思ってた」なんてブルース・リー以後の時代を生きる現代人のセリフではない。MMA選手にボクシングファンが多いように、ボクサーにもMMAファンは多いだろう。どちらも立派な競技であり、優劣をつける意味などないのである。

スタローンはハルク・ホーガンやテリー・ファンクは言うに及ばず、近年は「鉄人」ランディ・クートゥアやストーンコールド・スティーブ・オースチンともいい仕事をしており、MMAやプロレスに妙な偏見がある映画人ではない。むしろ様々な格闘芸術に最も敬意を払っている映画人のひとりだろう。そんなことを百も承知のスタローンが「ボクシング至上主義」者を「頭の固い時代遅れのオヤジ像」として嬉々として演じている姿は、実に感慨深かった。ハッキリ言って、隔世の感がある。猪木・アリ戦以来、我々プロレスファンが特にアメリカのボクシング至上主義者の侮辱にどれほど耐えてきたことか。いっぺん日本で出版されたアリの伝記とか読んでごらんなさいよ、猪木に対する不当な侮辱がご丁寧に日本語に訳されて載ってるぜ。連中はパンチ一発何万ドルとか金勘定しかしねえんだ。アメリカのボクシングジャーナルなんて、当時アリの周囲にゴロゴロいた寄生虫どもと大差ねえのさ。

この映画を観に行く前々日、具体的には2014年4月3日だが、Twitterでモハメド・アリがUFCのダナ・ホワイトにツイートしたんだ。猪木戦の写真とともに、

「ダナ・ホワイト、きみはどう思う? モハメド・アリが元祖MMAファイターじゃないか?」

映画を観ながら、そんなことが脳裏をよぎったりしていたんだ。

ボクシング至上主義は、今もアメリカのオヤジどもの心に根強く残っていることだろう。しかしこの映画がそれを一種のノスタルジー、消え去ってゆく古き男たちへの郷愁として描いたことに、オレなんか少しばかりホッとしたんだ。そしてこの扱いを快く受け入れ、ノリノリで出演してみせたチェール・ソネンさん、ひいてはUFCの現在の勢いというものは大したもんやなあと思いましたです。あ、映画の出来は普通でした。