「ズートピア」 正体見たり 八百長野郎

レンタルブルーレイで、昨年話題になった「ズートピア」。たいへん支持されている作品なのでアレなんだけど、以下感想。少しネタバレあり。

ウォルト・ディズニー・カンパニーは子供向けアニメーションや愚民向け遊園地を通して、長年にわたり差別的偏見やステレオタイプを世界に浸透拡散させてきた悪の秘密結社である。 (★3)


だからピクサーが乗っとろうがジョン・ラセターが仕切ろうが、オレは信用しないんだ。


ズートピア」は作り手が決めたルールの中では、異常に完成度の高い映画だ。オレだって観てる間はすげー楽しかった。感心もしたよ。しかし観終えてから、様々な疑問が噴出する。その疑問に、「ズートピア」は答えてくれないんだよな。


この映画は主人公ウサギの「肉食動物には凶暴な本能がある」という発言を「過ち」として描いている。本当にそうだろうか、と思う。いや言いたいことは判ってるよ、誰の中にもある差別意識の話なんだろ。しかしオレがその隠喩につきあう義理はないんだよな。オレは映画の中で描かれていることをそのまんま、見たまんま受け取って、そしてディズニーの思惑とは違った何かを勝手に感じとり、ここに書いてやるのだ。


主に草食動物を捕食して生きる肉食動物からその本能を奪いとって理想郷でございとするこのズートピアという街は、いったい何やねんとオレは言いたいのである。いったい、ライオン市長は何食って生きてるんだ。これのどこが多様性讃歌なんだ。八百長じゃないか。お前なんかなあ! 八百長ばっかりやりやがって… この八百長野郎!


けものフレンズ」ではジャパリまん食ってたよ。「ライオンキング」ではミミズとか虫とか食ってたな、ミミズや虫ならええんかい、何がサークルオブライフやねんという問題はありつつもな。うろ覚えながら「ジャングル大帝」では肉食動物も農耕して菜食してたような記憶がある。ハッキリ言って、この作劇上の問題を完璧に解決する知性あふれる回答はジャパリまん以外にないと思う。「多様性讃歌」、「異質な他者との友愛」をきちんと描ききったのが、なんとケモナー美少女ちゃんしか出てこない激安深夜アニメ「けものフレンズ」だけだとは、なんという皮肉だろうか。まあそれはそれとして。


ズートピアには鳥類がいない。爬虫類が、両生類がいない。霊長類もいない。ヒトなんてもってのほか。斯様な選別、排除、隠蔽の上に成り立つ理想郷って何なのだろうと思うんだ。そんなもんシャキーラさんがなんぼ熱唱したって誤魔化せないんですよ。あと主人公ウサギがマフィアとつるんで暴力で自供を引き出す場面があったけど、ああいうのはええんか?


オレだって差別アカンくらいのことは思います。この映画が言いたいことは否定しないどころか賛成だし、この映画が勝手に定める枠内においては、実にうまくテーマを表現しているとも思う。いいところのたくさんある映画です。でも成立してるかといえば、これは成立してないと思ったよ。結局、より異質な他者を排除した上での「博愛」なのさ。要するに、実にディズニーらしい作品なのだった。