「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」

劇場で「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。ちなみに前日に「TENET」も観たんですけどね、なんだか忙しい映画で好きじゃなかったな。ヴァイオレットちゃんも好きじゃないんだけど、去年の放火殺人事件に関連して応援の気持ちでムビチケ買ってたので観てきました。

何も終わっちゃいねえ 何も

ヴァイオレットちゃん・エバー本編 (★3)


強く感じたことは、毎度のことだがなにしろ長げえーよ、ということだ。140分。「もののけ姫」(133分)より長いんだぜ。冒頭のあるテロップのフェードイン、フェードアウトのゆっくり具合を見て「これは長い闘いになるぜ…」と思ったが、ホントに長かったな。


このシリーズについて思うところは全部「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝」のレビューに書いた。

pencroft.hatenablog.com

全体を通じて、ランボーを美少女化してトラウトマン大佐に懸想するみたいな話。ところが今回、このトラウトマンが煮えきらんやつでね、それでもグリーンベレーかと。オレの戦争じゃなかった。あんたにやれって言われたんだ! だいたいこの話に140分も必要なのか? もともと作り手の手に乗ってない自分からすると、昼ドラ観てるような気分になるのも仕方ない。しかしこの作品に感動した人の感動は、それはそれで尊いものだ。大事にしていっていただきたい。


さて指摘というと偉そうだが、この映画で気になったので書き留めておきたいことがある。お話の序盤。ヴァイオレットちゃんが働いている郵便社には、社長の愛人であるところのエロい姉御がいて、胸元が開いたキチガイみたいな服を着ている。この人の胸の谷間が大きく画面に映った次のカットで、劇中で普及してきた電話機が画面に出る。それは壁掛け式の昔の箱型電話で、ベルが2つ横並びで前面についている。これがどう見てもパイオツなのであります。本当にありがとうございました。

こんな電話

これは観客の煩悩への目配せであり、明白に仕込まれたギャグなんだよな。偶然ってことはない。絵コンテで設計されるアニメに偶然はない。2つのベルを前面に配した設定も意図的だ。箱の上面にベルが付いてるモデルも多いのだ、「となりのトトロ」のババアの家の電話なんかそうだった。

となりのトトロ

シリアスなお話にギャグなんか入れるな、とまではオレだって思わない。しかしこの映画、後半では死にゆく少年が親友と電話で話す、阪妻の「王将」のような感動的な泣かせの場面があるのだ。しかしわたくしは「でもその電話、パイオツの象徴でっしゃろ…」と映画序盤のギャグを思い出さずにはいられなかった。つまりこの映画、コンテ段階でいろいろと制御ができていないのだ。いくら作画と仕上げがキレイでもなあ、と「外伝」を観た時と同じ感慨にふけることとなった。

観客の視線を胸元に集めてから電話のベルを見せる