「サイダーのように言葉が湧き上がる」で不可解が積もる

毎日死ぬほど暑いですね。皆さんオリンピック見てますか! ぼくは見てません。アニメ観てきました。以下、ネタバレ あるけどそういう問題ではない気がします。観てない人にはなんのこっちゃ判らんでしょう。

イマイチ感情移入できないガールとボーイ

節々で主人公が俳句を詠む。「にっぽん昆虫記」かよ!(言いがかり) (★2)


なんせ不可解なことが多すぎて、全然集中できない。冒頭とラストにデカデカと「フライングドッグ10周年記念作品」とテロップが提示される。尋常ではない押しつけがましさだ。この映画のテーマ、いちばん言いたかったことは「フライングドッグが10周年なんですよ~」ということなのか。そういうのは社内の朝礼とかでやってくれないかな。もしかしてこれも俳句なのか。


フライング


ドッグ10周


年記念


みたいな。まあ劇中に出てくる俳句を全部足したって「フライングドッグ10周年記念作品」のインパクトには敵わない。


ヘッドホンやイヤホンで外界を遮断する内向的な少年という造形、もういいかげんダサいのでやめませんか。エバンゲリヨンのシンジくんから四半世紀です。そして誰もがマスクしてない社会でマスクを手放せないヒロインの造形は、まさかのコロナ禍で誰もがマスクをしている社会が到来したため、大きく魅力を失ってしまった。気の毒に。


あのー、2人の遭遇とスマホの取り違えがあってドタバタあるんだけど、2人が再び会ってスマホ交換する場面がなく、ヒロインは知らんうちにスマホを取り戻してる。これが凄まじく不自然なんだ。だって絶対に必要な場面やろ。ボーイとガールがちゃんとミーツする場面ですよ。自分が急速にこの映画への興味を失っていくのを実感した。


また、この2人はレコード探しを全然まともにやらない。レコード店の在庫をさらうだけだ。お前らリサーチ舐めんなよ、そのスマホで電話かけまくって地道な聞き込みやらんかいとぼかー腹が立ちました。ヒロインがレコードをよく知らず、ひどく雑な取り扱いをして割ってしまうのはいい。割れたレコードの破片を接着しようとする、ダラダラ長い場面がある。オレは覚えているのだ、アロンアルファつまり瞬間接着剤というものが世に広まる過程で、その性能を示す様々なCMが放送された。その中に、割れたレコードを接着して再び聞けるようにするというものがあった。ではヒロインが使ってるこの接着剤は何なのか、瞬間接着剤なのかと思えば、接着剤そのものを全然ちゃんと見せないのである。あのー、こういうの本当に、絶大なストレスなんだよな。ヒロインが住んでるイカれた家なんか典型的なんだけど、全然意味が判らない。変なだけで、変であることを全然生かせてない。不可解なことが、不可解なままゴロゴロ転がってるだけ。


監督には描きたい絵、見せたいモチーフ、オレこういうの好きなんだよねーは「ある」のだ。問題は、それらがまったく物語や表現として仕上がってないことだ。やりたい要素をなんとなく並べただけに見える。イオンモールや団地を見せたいんだよな。高齢化と空洞化の地方で生きる若者のアレやりたいんだよな。でもたとえば「ペンギン・ハイウェイ」が、一見味気ない郊外住宅地を断然美しいものとして描いたような「気合い」は、ここには皆無だ。少年はどこに引っ越すのか、どれくらい離れた土地なのか、もう二度と戻ってこれないのか、この映画は重要な情報をなんにも教えてくれない。「秒速5センチメートル」とか観てみろよ。栃木って… 行ったこと、あるか? あと、せっかく夏の話でこの絵なんだから、オレは海が見たかったな。メチャクチャ内陸(たぶん北関東)だったなあ。これではせっかく10周年を迎えたフライングドッグの今後が心配になるのである。イヤ別に心配はしてませんが。


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