なぜ作る 「シン・仮面ライダー」

庵野秀明監督作品「シン・仮面ライダー」を観てきましたよ。わたくし仮面ライダーは全然興味なくて、ちゃんと観たのが先日の白石和彌監督の「仮面ライダーBLACK SUN」のみ。あれにも結構な文句があるけど、少なくともやりたいことは伝わるし、3割くらいは好きな気持ちもある。庵野秀明の「シン・仮面ライダー」はオタク宴会芸としてもクォリティ低いと思ったが、出来不出来を度外視しても何がやりたいんだか不可解な映画だった。以下、ネタバレあるような気がしないでもない感想。お好きな方はごめんなさい。

本編じゃない「プロモーション映像A」より

なぜ今この映画を作るのか、核となる動機がほとんど見えない。好きな仮面ライダーを東映が「やらないか」と言ったからホイホイ作っちゃったのか。 (★2)


ナディアの兄貴みたいなことやらされてる森山未來が人類補完計画みたいなことを言い出したところで、さすがに我に返って脚本書くのを止めなきゃダメですよね。ライダー託されたのにいつもの手癖に陥ってんだから、アレ、あんなにライダーやりたかったのにこれおかしいな、と思わないと。


国家へのボンヤリした恭順、社会への無関心、見識の狭い世界観、生活実感の希薄さ、身体感覚の欠如、必然性を無視して見映え優先、生身の役者にアニメの如き設定を課してキャラ表にしてしまう。これら庵野秀明の拭いがたい悪癖が、震災という強烈なツールで観客を不条理な世界に巻き込んだ「シン・ゴジラ」では尽く裏返ってすべてがうまくいったのに、空っぽの器に初代ライダー再現してお好みで盛りつけましょうという安易な企画では悪癖が悪癖のままゴロゴロと転がってるだけで無様だ。


オレは仮面ライダーを好きになったことなど人生で一度もない門外漢なので古参ライダーファンにブチ殺されそうなことを平気で書くが、えっ、仮面ライダーってこんなもんなんだ、へえーそうなんだーと思いましたよ。オレはアメコミ映画もほとんど観ないが、竹野内豊と斎藤工の名前バラシって「ダークナイト ライジング」のジョセフ・ゴードン・レヴィットのアレですよね。アメコミ映画の真似するんだ、フーンと思いました。あと「世界の中心で、愛をさけぶ」で幼い恋人役を演じて出世した2人がショッカー首領とサソリ怪人ですか、役者ってホント大変ですねと、これはしみじみ思いました。