「きみの色」 人の色が見えるという設定がもう人間をナメている

山田尚子監督のオリジナル長編アニメ、「きみの色」を観てきた。観てる間はフーン、フーンと思ってて、腑に落ちないまま家に帰ったらだんだん激烈に腹が立ってきて、このような感想になってしまった。お好きな方々にはごめんなさい。しかし書いてて思ったけど、オレ山田監督のアニメだいたい観てるんだなあ。さすがに短編とかは観てないけど、気持ち悪いやつだな。

びっくりするほど魅力のない同級生たち

自身の集大成的な内容を手癖で作ってるもんだから、監督の悪癖が山盛り。もともと山田尚子作品をお好きな人にはよろしいんでしょうな。 (★2)

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「ガラス職人/The Glassworker」、初期衝動という宝石

「ひろしまアニメーションシーズン2024」なる催しがあり、世界の様々なアニメが上映されたのであるが皆さんは御存知か。オレは全然知らなかった。しかし先日アヌシー・アニメーション国際映画祭において日本のアニメによく似たルックのパキスタン製長編アニメが上映されたことは知っていた。youtubeでトレーラーを観て、これは是が非でも観たいと確信し、この1本、1回だけの上映を観るためだけに灼熱の広島へと密航した。その甲斐はあったと言える。

The Glassworker

アニメあふれるこの国で、パキスタン初の長編アニメを観て自由に息ができたこと (★4)

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「化け猫あんずちゃん」 我々は幾度「少女が田舎でひと夏のナントカ」映画を観るのか

ロトスコープで踊る吉田

森山未來が見事(チャリパクに気づく芝居など最高)で大いに楽しんだが、えらく生ぬるい。ここまでお子様ランチ化するのかと思った。 (★3)

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「悪は存在しない」 そうかー?

地元のミニシアター、ホールソレイユで「悪は存在しない」を観た。
この監督の映画は「ドライブ・マイ・カー」しか観たことはない。それも日本映画専門チャンネルの録画で観たものだ。シネスケの感想リンクはこちら。
CinemaScape/Comment: ドライブ・マイ・カー
ドライブマイカーみたいに3時間あったら観なかったが、2時間切ってるらしいので観に行った。ネタバレ注意だが、ネタバレとかそういう問題でもない気がする。

ちょっと長渕入ってるオヤジのニット帽

作り手の描く範囲内ではよくできてるし力のある変な映画とは思うが、好きかといえば全然好きじゃない。 (★3)

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「白日青春 生きてこそ」 すばらしいアンソニー・ウォン

アンソニー・ウォンの新作「白日青春 生きてこそ」を松山で観てきた。東京では1月公開の映画なのに、四国民は3ヶ月も待たされる。いつもの許しがたい地方格差である。

アンソニー・ウォン 黄秋生

アンソニー・ウォンは好きな役者だ。好きになったきっかけは「八仙飯店之人肉饅頭」(1993)だった。以降もハーマン・ヤウ監督と組んだ人間探求シリーズ(と勝手に呼んでる)、「タクシーハンター」(1993)、「エボラ・シンドローム 悪魔の殺人ウイルス」(1996)など傑作が多い。とかなんとか言いつつヒットした「インファナル・アフェア」三部作は観てなかったりする。

なぜオレはアンソニー・ウォンをこんなに好きなのかを考えながら観ていた。 (★4)

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底辺から見る宇宙 「宇宙探索編集部」

「宇宙探索編集部」

「宇宙探索編集部」を観るために、週末に高知に行ってきた。この映画は文化荒廃県・香川では上映されなかったので、上映してくれたゴトゴトシネマさんに感謝します。高知には他にも毎週末上映会をやってるシネマ四国さんもあって、皆さん立派だ。文化の荒廃と日夜闘っておられる。

以下、CinemaScapeに投稿したネタバレいっさいなしの感想。今年のベスト候補です。

穴の空いた胸には、ロマンのかけらがほしいのである (★5)

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ミスター珍と、力道山

1994年刊

ミスター珍が亡くなる前年に刊行された著書、「万病息災 糖尿地獄からの生還」を読む。こんな本が出ていたことは全然話題にならなかったし、こんな本を読んだのは流智美と吉田豪とGスピ編集部ぐらいなんじゃないかと思う。タイトル通りミスター珍の長年にわたる闘病の記録であり、しかし日本プロレスや国際プロレスの貴重な記録、歴史の証言でもある。正直言ってこの本はメチャクチャ面白かった。君たちも探して読みたまえ。

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「夜明けのすべて」 上白石萌音のモコモコ装備

モコモコのマフラー

「夜明けのすべて」を観てきました。三宅唱監督の前作「ケイコ 目を澄ませて」がよかったのと、みんな大好き上白石萌音が出てるからである。よかったですよ。以下感想。あ、「指で月を隠す映画」ってのは劇中2人の会話に出てくるんですよ。判る人は教えてください。

指で月を隠す映画ってなんだろう、知らないな。「指を見るんじゃない。その先の栄光を見失うぞ」 は「燃えよドラゴン」だけど。 (★3)

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邦題イマイチだが傑作 「理想郷」

ヤーねえ田舎ってウンコくさくって…

先日、松山に足を伸ばして観てきたスペイン映画「理想郷」。高松でもあと2週間待てば上映するんだけど、どうにも待ってられなかった。そしてオレの勘は当たった。たいへんな傑作だったのでご紹介。以下感想、ネタバレ満載なので未見の諸兄は読むなよ絶対に読むなよ!

「田舎は地獄」、その向こう側へ (★4)

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「シン・ちむどんどん」 日本が植民地支配する島で

日本映画専門チャンネルで放送された「シン・ちむどんどん」のRECを観た。プチ鹿島氏とダースレイダー氏が大島新プロデュースで作った「劇場版センキョナンデス」の続編だ。もともとはお二方のyoutube番組「ヒルカラナンデス」があって、いや、説明めんどくさいから各自調査な。

前作「劇場版センキョナンデス」は劇場で観て、面白かった。今作「シン・ちむどんどん」はオレが住む香川の近くで上映がなく観られなかったので、CS放送はありがたい。楽しみにしていたのだが、これが思いもよらぬヘビー級の傑作だった。

映画の前半は2022年9月の沖縄県知事選(現職の玉城デニー知事が当選)を、前作「センキョナンデス」式に取材。後半は米軍基地問題の今を描く構成になっている。以下感想。

辺野古の中山さん

終盤に登場する辺野古ボランティアガイドの中山さんの、このうえなく明晰な説明を聞いて改めてゾッとした。これがあるだけで、値千金の映画だ。 (★4)

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竹内さんと「PERFECT BLUE」と今敏

モンスターとして描かれるストーカーくん。今敏の人間観が出てる

先週末は大変だった。金曜の夜に香川の宇多津で「PERFECT BLUE」の4Kリバイバルを観た。そのまま瀬戸大橋を渡り、土曜朝から岡山で「バーナデット ママは行方不明」。夕方には広島で「PIGGY」。しまなみ海道を渡り、日曜朝に愛媛の松山で「国葬の日」。香川の自宅に戻って競馬(負けた)。

地方における映画の公開があまりにもデタラメ、気まぐれ、遅れまくり、バラバラであるせいで、観たい映画をすぐに観たいせっかちなオレはこのような弾丸密航を敢行せざるを得ない。ちなみに、4本の中でいちばん気に入ったのは「バーナデット ママは行方不明」。皆さんも観ましょう。

今敏の「PERFECT BLUE」(1997)はたぶん99年頃、ビデオ化されて間もなくVHSで観た。気に入らねえなと思った。以後、今敏は気に入らねえアニメーション監督としてチラチラとオレの視界に入り続けることになった。以降オレが観た数少ない今敏監督作は「PERFECT BLUE」、「千年女優」、「パプリカ」の3本(だけ)である。

以下、昨夜CinemaScapeに投稿した感想。以前ここに書いた竹内さん関連の記事と一部内容が被るので、はてなブログにあげる気はなかったのだが、シネスケを読んだ友人から「はてなにはあげないんですか! あげないんですか!」と詰め寄られたのでやっぱり転載します。

今敏を出会い頭で嫌いになった作品 (★2)

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気に喰わねえ 「アリスとテレスのまぼろし工場」

「アリスとテレスのまぼろし工場」を観てきた。

岡田麿里の前(監督)作「さよならの朝にナントカカントカ」は円盤で観て、気に喰わねえな気持ち悪いなと思ったものだ。「アリスとテレスのまぼろし工場」は劇場で観たわけだが、気に喰わねえな気持ち悪いなと思った。以下、ネタバレあり。

90年代初頭には道の駅がないのでドライブインがある

園部さんかわいそう (★2)

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