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そして以下、今回の「イップ・マン 継承」の感想。マイク・タイソンもよかったよ!
かつてドニー・イェンはブルース・リーを異常に好きなだけの、戦闘的な若き武打星だった。彼が年を経て、かくも円熟の境地に達して映画を作ってくれていることに心から感謝したいと思うのだ。 (★5)
「ホン師匠、勝利よりもご家族との団欒を」 これは前作「イップ・マン 葉問」において、ドニーさんがサモ・ハン・キンポーに対して伝えた言葉だ。今作の芽が、すでに前作の中にあったことが判る。今回、ドニーさんはマックス・チャンとの死闘の後、「大切なのは、そばにいる人だ」と声をかける。聖人マザー・テレサの言葉と、ほとんど変わらない。精力善用・自他共栄でもいいんだけど、他者を制することで身を護る「武」の世界においてこのような境地に触れた言葉を目にする時、オレは訳の判らぬ巨大な感動を覚える。ブルース・リーは、成した功績と後世に与えた影響を思えば信じられぬ若さ… 32歳でこの世を去った。ドニーさんは今作の香港公開時、50歳を超えている。偉大なるブルース・リーの足跡を夢中で追いかけていた若者が、いつしかリーの没年を追い越し、早逝したリーが残せなかった仕事、彼が存命なら手がけたであろう仕事を代わりに果たしているようにオレには思えるのだ。
そう思うのは、2014年の「カンフー・ジャングル」があるからだ。監督も違えばアクション監督(ドニーさん自身が務めた)も違うこの映画は、「イップ・マン」シリーズと思想的に密接に繋がっている。端的に言ってそれは「優劣を決する」ことよりも「勝利する」ことよりも、「強い」ことよりも尊いものがこの世には存在するという思想だ。
ブルース・リーのモノマネではなく、彼が表現の世界で成す筈だった仕事を代わりに果たす。ドニーさんが引き受け、背負ったものはとてつもなく大きい。ここにも「継承」が在る。ブルース・リーを演りたいに決まってるドニーさんが、今回「少林サッカー」のキーパーにその役を譲っているのは、そのひとつの証左であろうと思う。
病気の奥さんが「一緒に写真を撮りたい」と言うでしょう。いつもニコニコ穏やかなイップ師匠が、それ聞くと顔を歪めて、男泣きに泣くんだよな。あの場面は泣けて仕方がなかった。詠春拳の正統争いなどガン無視して、奥さんと社交ダンスを踊る。言葉にせずとも伝わる思想、それが映画によって余すところなく表現されている。かつてのブルース・リーがそうだったように、ドニーさんは映画というメディアを使った思想家なのである。
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