東京のあなたがとっくに観て忘れた映画を田舎のオレは今も待っている

きのうは安倍首相が辞意表明ということで世間は大騒ぎ。しかし安倍首相が辞めたところで政府与党は山盛りのクソであって、この国の何かが好転する気も全然しないし、この国に積み上がった問題がいくらか解決するとも全然思えない。首相個人に対しては、まーたお前が好きに決めたタイミングなんだな、でもいつか天誅がくだされブタ箱にブチ込まれる時はお前のタイミングじゃねえぞ、ぐらいしか思うことはない。病気だったのに長い間お疲れ様、感動をありがとう的なことを言う人もいる。きっといい人なんだろうな。でもオレは、そんないい人たちの行き着く先には「パラサイト 半地下の家族」に出てきた「リスペクトおじさん」の姿があると思っている。しかしオレ自身はまったくもって「いい人」ではなく、ろくでもない人間だ。だから安倍首相が死のうが生きようが、クソどうでもいいというのが本心である。あと今さらだけど、あの人ドルーピーに似てるよな。

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なのでまったく関係ない話を書く。あ、「ベルばら」は40話全部観ました、死ぬほど面白かった。でもそれじゃなくて、「映画の公開にはなぜ、いまだに東京と地方の時間差があるのか」というお話。なぜと言っても答えは判らない、推測ばかりを思うままに徒然に。恨み節みたいなタイトルでごめんなさい。

1972年生まれのオレは18歳まで文化果つる地、香川県高松市に住んでいた。2本立てが普通だったその頃、メジャーな映画は東京と同時公開だったが、ミニシアター系(要するにマイナーな映画)は東京から半年ぐらい遅れての公開(あるいは公開されない)だった。当時はこの時間差をあんまり不満にも不審にも思わず、そういうもんかなと思っていた。田舎しか知らぬボンクラ少年に東京は遠かった。とにかくオレはそのようにして、周回遅れの街・高松でそれでもなんとか遅れて公開されたいい映画、「八月の鯨」や「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」や「ストレンジャー・ザン・パラダイス」なんかを地元のミニシアターで観ていた。それらはいずれも半年ぐらい前にキネ旬などの映画誌ですでに批評が書かれて評価も終わった、何なら淀川さんの年間ベストテンで見かけた後の映画たちだった。

さて1991年に東京(一時期は神奈川)に移住してからはどんな最新映画やマイナー映画も観放題なので、ストレス知らずの浮かれた30年間を過ごした。淀川さんは亡くなられた。まあ仕事が忙しすぎて観たくても劇場で観られなかった「トロールハンター」のような映画も多かったのだがそれは自分の問題で、トロールハンターのブルーレイも後で買えたし、別に文句はなかった。そして昨年、30年ぶりに出身地の高松に戻ってみて驚いた。なんと、いまだに地方ではマイナー映画は大都市からおよそ半年ぐらい遅れての公開(あるいは公開されない)なのである。これにはかなり苛立ったし、今も苛立っている。

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こんなのばかり

まず間違いなく今年のベストワンであろう「淪落の人」を松山で観たのは6月だったので、東京での公開から4ヶ月遅れ。昨年ベストの「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」は徳島で1ヶ月遅れ、「ブラインドスポッティング」は岡山で3ヶ月遅れで観た。文化果つる香川県は映画公開時期において近隣県にさえ後れをとっているため、観たい映画を観るのも大変なのだ。あとゲームも1日1時間なんだとさ、バーカバーカ死ね殺す。

いや、昔は仕方なかったと思うのだ。なぜなら昔はフィルム上映だったからだ。映画1本分ものプリント代はべらぼうに高かったはずで、数少ないフィルムが大都市から地方へ、長期間にわたり全国を「巡回」せざるをえなかったのは理解できるのだ。東洋現像所改めイマジカは、いい金とるもんな。しかしきょうび、田舎の小屋でもたいがいデジタル上映ですよ。デジタルは複製にコストも時間もかからないのが利点なんじゃないのか。今の劇場用データは外付けHDDに収めて劇場に物理的に配送されると聞いたが、そんなHDD、100個でも200個でも作って全国同時公開したらええやん。イヤもはやHDDさえ不要で、ファイル分割とかすればギガファイル便でもタダで送れてどこでもDLできるやんけ。

デジタル化という技術的革新を経てもなお、地方映画興行の時間差は改善されてない。映画のデジタル化を推進したジョージ・ルーカス先生もモジャヒゲの向こうで泣くぜ。これはいったいなぜなのか。

デジタルになってもなお、我々の知らない何かしらのくだらない技術的制約があってHDDの数を作れない、ということもありうるのかもしれない。それはよく判らない。しかしオレがたぶんこうだからではないかと推測する理由は別にある。以下にそれを書くが、見当が外れてることも大いにありそうだ。なんせ映画を観るのは好きでも、映画興行については何ひとつ知らないド素人の考えることなので。

地方のミニシアター系映画館の館主になったつもりで考えてみる。ひとつの推測、むしろ邪推かもしれぬが、「大都市で上映が終わったマイナー映画のHDDを中古払い下げの感じで借りる」のは、「新作マイナー映画を東京公開と同じタイミングで借りる」よりもかなり安くつく… お得である… なーんてことが、あるのではないだろうか、と思うのだ。上映済みの出がらしデータでも、デジタルならば画質の劣化はないのだ。つまりロードショー(新作封切り)をハナからあきらめた、昔の田舎の二番館・三番館のおんぼろフィルムシステムが、デジタルになった21世紀にも脈々と生き続けているのではないだろうか。

また、地元でのマイナー作品の上映をするしない、するなら大箱か小箱か、上映期間の長短などを、まず東京など大都市での興行の具合を時間差カンニングしてから決めることができるならば、それは興行主たる劇場館主にとって大きなメリットであろうと思う。大都市で客が入った映画はかければいい。コケた映画は買わなきゃいい。つまり地方のミニシアターにとって、マイナー作品の上映は大都市より遅いほうがいい。何なら大都市でひと通り終わってからのほうがいい。カンニングが終わるまで、地方の観客なんかなんぼでも待たせておけばいい。どうせどこにも行きゃしない。

東京にいる間、オレは「地方ではマイナー映画の公開が恒常的に遅れてる」ことなんか気にもとめてなかったし、そもそもろくに知りもしなかった。さらに前の未成年時代は若さゆえのあやまち、田舎の世界しか知らずに「こんなもんだろう」なんて思っていた。しかしキモくて金のないおっさんにクラスチェンジして田舎に逆噴射家族した今、中央と地方の格差ってものを実に様々なところで、映画を観に行く時にさえ歴然と感じている。田舎であっても、テレビは遅れない。radikoでどこのラジオでも聴ける。新聞も遅れない。でも大スポは半日遅れで朝刊になってる。そしてマイナー映画は、何ヶ月も遅れるんだ。四国には海と山と川しかない。IMAXもない。いや、松山に1館あったか。1館だよ1館。

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一方で東京の人口過密に比べれば高松などという、マーケット以前に人類がまばらにしか存在せぬ荒野で曲がりなりにも映画館がどうにか営業してるのはとても立派なことであり、誇っていい文化事業とさえ思えるのだ。客に困らぬ東京ならばマニアックな映画館でもなんとかやっていけるだろうが、田舎では死ぬ。そう考えたとき、徳島のアニメ(だいたい)専門映画館 ufotable CINEMA が頑張っているのは素晴らしい。今は違うが、開館当時は徳島県唯一の常設映画館だったのだ。近藤社長の脱税ぐらい大目に見ろやという寛大な気分にもなる。そして脱税してなくったって、地方の映画館ましてやマイナーな小屋の経営が、コロナ以前からずーっと苦しいのは知っている。興行リスクを避けたいのも理解できる。映画が遅れるのも仕方がない。と、結局は日本が貧乏だからしゃーない、みたいな湿った話になってしまうなあ。やっぱりせ、せ、政治が悪いんだよおおおお(山田洋次「息子」より田中邦衛)。

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