「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」 揺蕩う紫煙、生命の営為、活動写真

「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」を観てきた。

95分の短い映画なんでね、皆さんも観るといい。観たまえ。観なさい。観ろ。

観ろ (★5)


これはもう万人に観ろとしか言いようがない。解決不能に思える巨大な問題に向き合い続ける青年2人の友情と、絶望的不平等。それでも今、何が起こっているかを記録することが抵抗だ。「たとえどんな現実が突きつけられようと、「それでも」と言い続けろ」、とはこれなのだ(「機動戦士ガンダムUC」より引用)。


日中の撮影を終えた無数の夜、2人の対話には常に煙草がある。水煙草や紙巻煙草の紫煙は、融通無碍に刻々と姿形を変えながら彼らの面差しの周りを揺蕩い、やがて空気に溶けて消えてゆく。地獄にあって尚、紫煙は美しい。人体を通過した煙には瞬間、心が宿る。時にそれは言葉よりも雄弁だ。言葉では言い尽くせぬ並々ならぬ思いが、ひととき形を現しては夢のように消えてゆく。だからこんなにも美しい。この過酷な地獄において、紫煙の美しさはまるで奇跡だ。水と草と火でできた束の間の灯火が、我々の目を奪う。なんと映画らしいことか。なんと映画そのものなのか。これを殺すのか。本当にこれを殺すのか。


オレはもう煙草が吸いたくて吸いたくてたまらなくなり、映画が終わると小屋を飛び出してすぐ吸った。映画の味がしたぜ。


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