さいきん観た映画 「虹色ほたる 〜永遠の夏休み〜」

虹色ほたる―永遠の夏休み― [DVD]

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バルト9で。「ももへの手紙」を観逃してしまったので、雪辱戦のような気持ちで観に行った。客入れに苦戦しているようで、朝1回のみの上映になっていた。

これは「マイマイ新子と千年の魔法」と同じパターンだ。こういう扱いになるのは、公開第1週の成績がひどい場合らしい。朝1回の上映では、興行成績挽回は事実上不可能になるので、劇場側からは「見捨てられたプログラム」ということである。くやしいのうくやしいのう。以下、CinemaScapeに投稿した感想。

作画と美術の冒険はたいへんな目の快楽。素敵な瞬間がたくさんある。ただ感動のために物語を自由自在に作りすぎており、肝心なところで醒める。せっかくの題材、5月ではなく夏休みに公開できなかったのだろうか。(★3)


絵を見てもらえば判るが、この絵柄はいわゆる「売れ線」からは程遠い。この絵がぐにゃぐにゃ動くだけで楽しい。驚いたのは、ところどころ輪郭線が途切れている一見「ラフ」なタッチが全編に見られたことだ。これ手抜きかと思えばさにあらず、実はけっこうめんどくさい処理の筈なのだ。輪郭の描線とは別に、色の塗り分け線を設定せねばならないからだ。極端な例が高畑勲の「ホーホケキョ となりの山田くん」における全編水彩画タッチで、あれは大変だったみんな死んだみんな死んだと風の噂に聞いてます。

さいきん観た映画 「ロボット」

ロボット 完全豪華版ブルーレイ [Blu-ray]

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渋谷TOEIで、ノーカット版。全国公開はなぜかヒンディー語139分で、そんなもん観る意味ねえなと思っていたところ、遅れてタミル語177分のノーカット版が公開になったので、思い直して劇場に行ってきた。やっぱりラジニ兄貴はタミル語やないとアカンで! いや聞いても違いは判らんけど。以下、CinemaScape感想。

高品質な映像表現、基本に忠実なスジ運び、楽屋ネタの完全撤廃、ユエン・ウーピンの武術指導。「ロボット」が完全に世界市場に照準を合わせているのが判る。(★4)

それでも胸を打たれたのは、あらゆる言語を喋れるロボットが「世界一美しい言語はタミル語です!」と高らかに宣言したり、博士がロボットの命名を自分の両親に頼むといった、インドらしい倫理観が伺える場面だ。特に、火災から助けだされる少女の強烈すぎるエピソード… インド人の高潔なる精神性、その美と厳しさに、共感はできずとも尊重するしかない文化の厚みを感じた。

観た人は皆ギョギョギョと驚いたであろうこの少女のエピソード、詳細はここでは書くまい。しかし、斯様に観客の心に複雑な感慨が渦巻いて容易に処理できぬ場面を正面から描くこの映画の志は、本当に立派だ。作り手の精神は本当に美しいと思うし、心から尊敬できる。