「夜明けのすべて」 上白石萌音のモコモコ装備

モコモコのマフラー

「夜明けのすべて」を観てきました。三宅唱監督の前作「ケイコ 目を澄ませて」がよかったのと、みんな大好き上白石萌音が出てるからである。よかったですよ。以下感想。あ、「指で月を隠す映画」ってのは劇中2人の会話に出てくるんですよ。判る人は教えてください。

指で月を隠す映画ってなんだろう、知らないな。「指を見るんじゃない。その先の栄光を見失うぞ」 は「燃えよドラゴン」だけど。 (★4)


脚本がいいし達者な役者が揃ってるのでハイ皆さんいい感じでどうぞ、とやっても淡々としたそこそこの映画になるような気もするが、この映画の出来はそれ以上だ。「ケイコ」もよかったし三宅唱監督、凄いんだな。


上白石萌音はほとんどの場面で輪郭もにじむフワフワモコモコの服を着るか身につけるかしており(マフラーや布団やブランケット含む)、いやー監督、判っておられますなとしか言いようがない。彼女の柔らかな印象が演出で強調されることで、PMSによる苛立ちの爆発は時に唐突で我々を驚かせる(申し訳ないが微笑ましく感じる瞬間もある)。松村北斗の彼女には鋭角的な顔つきの美人を配しており対照的だ。松村を巡ってこの女性2人が出会い会話する場面が実にいい。


非常に怖かった場面がある。上白石の忘れ物を松村がアパートに届け、会社に戻るくだりだ。上白石にもらった自転車に乗って、今まで着なかった社名入りの作業服を着てる。松村はボーッと上のほうを眺めながら(なぜだ)自転車で走る。これが不穏で危険なのだ。オレは山本小鉄よろしく「アッ危ないですよ! ちょっと待ってください!」と思わずヘッドセットを外して立ちあがりかけた。いつトラックに轢かれてもおかしくない。異世界になんか行けないよ、ゴミみたいに死ぬだけだ。この場面、風を受けて走る松村が実に幸せそうに見えるのが逆に怖いのだ。ここですでに松村を他人とは思えなくなってることに気づくんだよな。上白石萌音だけ観てたつもりなんだけど。


中学生が会社を取材する。上白石萌音がインタビューされて目標を聞かれ、答えあぐねているとプラネタリウムやるでしょうと言われ、「それ」も目標だと答える。撮影する男子中学生は「ダメ。もう1回」。あーっコイツすげえ優秀だよと舌を巻いた。本人から「プラネタリウム」というワードがオンで出ないと使えないんだ。「それ」じゃあダメなのだ。あの少年見込みありますよ。

追記。「指で月を隠す映画」、「アポロ13」(1995)ではないかとのご指摘あり。他にもありそうだけど文脈的にたぶんこれでしょう。ちなみにわたくしアポロ13は昔テレビで観たけど記憶は薄れております。

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