「陽だまりの樹」

陽だまりの樹(1) (手塚治虫漫画全集)

陽だまりの樹(1) (手塚治虫漫画全集)

手塚治虫の幕末庶民大河ドラマ。毎度のことながら手塚治虫はこういうドラマが異常に巧くてついつい夢中で読み進めてしまうのだが、いつも読後に感じる寂寥感がどうにも好きになれないのだ。根の深い諦観、厭世観を感じる。
それとは別の話で、手塚マンガはキャラクターの魅力は100点満点なのに手塚自身が語り部として理性的に過ぎる(教師的すぎる)きらいがある。話の中で突出して面白いところがあっても、手塚は絶対に脱線しない。魅力ある面白い部分を終わらせて、お次の面白くないけど物語上必要なパートへずんずん進んでしまう。これは正しいかもしれないが、あんまり面白いものではない。面白いところは悪ノリして延々と描いてほしいのに、手塚は構成に破綻をきたしかねない脱線は決してしない。手塚のやる脱線なんてせいぜいたまにヒョウタンツギが出てくる程度、1コマや2コマで済む他愛ないものだ。この手塚の滞りなさすぎる進行は、どこか学校の授業を連想させて息が詰まる。