マッスルハウス7 後楽園ホール

行ってきました後楽園。楽しかった。面白かった。同時に、胸が苦しくなる興行でもあった。
回を重ね、ハードルがどんどん高くなるマッスル。マッスル坂井が台本を書けなくなるのも頷ける。しかし、書けない苦しみを提示する坂井に、我々は乗れないのである。
藤岡メガネの「坂井に追いつきたい」という動機はありえないと思った。直後、坂井が登場して藤岡を怒鳴りつける場面なんかもう、正視に耐えなかった。リング上においては、坂井より藤岡の方が上位概念の筈だからだ。試合も坂井より面白いし。藤岡が坂井を怒鳴りつけるのならわかる。そもそも藤岡のヘマを坂井がかばってきたなんてのは楽屋の話で、そんなもんこっちは知ったことではないんだよな。坂井に対して「テンション上げろよ」という亜門の言葉にも引っかかりを感じる。テンションの問題ではないのだ。結局、これも大仁田を呼び込むための問答でしかないと判明する。こっちのテンションは下がる。
大仁田厚というのも苦いチョイスで、今の大仁田はいかにも呼ばれりゃ出てきそうな感じがするんだよな。ちなみにこの時の新藤力也リングアナのコールは荒井さんそっくりで、驚いたオレは思わず本部席辺りを見て荒井さんを探してしまい、「ああ、そうだ。荒井さんはもういないんだ」と肩を落とした。
マッスル坂井の設定するハードルが非常に高いところにあるようだ、というのは推測できる。しかしその高い高いハードル、マッスルの仲間たちには見えていないし、観客にも見えていないのである。こういう時にはどうすればいいのかというと、ズバリ言ってちょっと手を抜けばいいのだ。そうすればハッピーな興行になるのである。我々は芸術を鑑賞しにきたわけではないのだが、坂井の苦悩は芸術家の苦悩だ。だから、ちょっと手を抜けばいいんじゃないですか、とオレは思います。しかし坂井は手を抜ける性分ではないだろうし、いったいこれからどうなるのかねえ…と心配になった。この日のマッスルは、感じた満足よりも感じた不安の方が大きかった。そういう時もある。