コッポラ先生の「メガロポリス」を観てきました。今作は本国での評判が悪かった。オレも観てみて、ま、そりゃそうだろうなと思いましたよ。

ラングの「メトロポリス」(1927)の子供なのは判ってたが、まさかメトロポリスより後退してるとは。 (★2)
映像はそれなりに凝っているのだが、こんなもんCGでどうにでもなるやろ感は否めない。逆にCGを使ってもこの程度なのか、という気もする。ただチラッと見せる「ベン・ハー」ごっこの戦車競走、このアリーナのちっぽけさはどうしたことだ。コッポラのやる気の無さはどういうことだ。弟分のジョージ・ルーカスは四半世紀前の「ファントム・メナス」で、同じネタを遥かに真剣にやってたではないか(評判は悪かった)。
ハッキリ言ってこの映画、全体的にショボいのである。貧乏くさいのである。ここまでCGが発達した現在、いちばん判りやすい映画のスペクタクルとはモブ、大群衆だとオレは思う。「メトロポリス」の大群衆のド迫力は、この映画には微塵もない。そもそもこの映画、「大衆」や「市民」にまったく興味がないのである。
アダム・ドライバーはメチャ天才、メチャ金持ち、メチャモテ、メチャ家柄いい貴族なうえに「ザ・ワールド」持ちときた。数え役満かな。とことんブルジョワ映画なんだよな。話がブルジョワ世界で完結してんだよ。庶民のこととかどうでもいいと思ってんの丸出しだ。天才建築家が未来都市を作るなんて、大昔のお伽噺だよ。「メトロポリス」より遥かに後退している。やっぱりさー、現代の映画なら資本家はブチ殺さなきゃダメだよ。コッポラは会社潰したりワイナリー売ったりして苦労してるのに、意識は徹底してブルジョワなんだよな。
老人が見た夢、ボケてから書いた遺言としては面白い気もするので、そういう映画だと思って納得するしかないだろうな。あと翻訳が戸田奈津子でガッカリ。「どうして口座が凍結されたので?」じゃねえよ、笑っちゃったよ。
悪く書いたけど、嘘をついてる映画だとは思わない。コッポラとしては正直に作ったのだと思う。しかしオレとしては気に入らなかったと、そういう話ですね。