最近、平原綾香さんという女性がホルストの「木星」に歌詞をつけて歌っており、それがなかなか評判になっている。オレとしては組曲「惑星」の白眉はどう考えても「火星」で決まりなのだがまあそれはそれとして、世間ではどうもこれがまるで画期的な試みであるかのように言われていることに気づいてしまった。あのなあ「木星」のカバーなんてそんなもん1999年にアルバム「庭」で遊佐未森がやってんだよ。
- アーティスト: 遊佐未森
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1999/03/10
- メディア: CD
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以前、松坂大輔が口走った「リベンジ」が流行語大賞に選ばれたことがある。あれもずいぶん人をバカにした話で、リベンジという言葉を日本に広めたのは正道会館の石井和義ですよ。K-1リベンジという興行があってね、今は亡きアンディ・フグが以前コテンパンにやられたパトリック・スミスに雪辱して大喜びしてたもんですよ。あのときリベンジという概念を導入したことによって、格闘技界は同一カードのグレードを上げていきながら商売するというプロレス的興行論を取りこんで今の隆盛に繋がるわけだが、まあそれは別の話。問題は松坂が明らかにK-1リベンジを観てリベンジという言葉を覚え、覚えたばっかりなので喜んで使ったら松坂ブームにのって流行語になってしまったという構造なのだ。ここでも先人の業績は無視されている。これに関しては、石井館長のことなど一言も言わずに流行語大賞を何食わぬ顔で受け取った松坂をオレは一生信用しない。ちくしょう球が速いからってえばんなよ!
オレは何かを好きになったら、その物事の源流をさかのぼらずにはいられない源流マニアだ。自分が好きなものの源流を知らず、いや知らないのはいいけれど、知りたいとすら思わない人の気持ちがまったくわからないのだ。例えば「イノセンス」冒頭で引用された小説「未来のイヴ」をオレは創元で文庫化された7、8年前に読んでいたが、それだって当時フリッツ・ラングの「メトロポリス」の源流を探っていたからである。普通の人は何かをさかのぼっていって「メトロポリス」に到達するんだろうが、オレはもっともっとガンガンさかのぼりますよ! いつもより多めにさかのぼっておりますよ! 同時期にやはりロボットをさかのぼっていてカレル・チャペックの「R.U.R.」を読んだらあんまり面白くなくて、
- 作者: カレルチャペック,Karel Capek,小松太郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
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勿論、すべての物事の源流を探れるわけはない。「木星」のカバーについてはオレが遊佐未森のファンだから気づいただけで、遊佐以前に「木星」に歌詞をつけた人もいるのかもしれない。さらに話を他ジャンルに広げれば、オレとて同種の間違いを気づかないまま膨大に抱えているに決まってる。しかしせめて自分が好きなもの、好きなことに関しては、そんな間違いはあってはならねえと思っている。こんなことは誰でも同じように思ってると考えていたが、どうも最近そうでもないらしいという感じがしてきて不安だ。