それでもチャーハンはうまい

ここ数年の2chを見ていると、韓国、北朝鮮、中国など東洋諸国への嫌悪や蔑視が目立つ。言うまでもなく2chは世間の一面であるから、つまりこれ日本人が東洋を蔑視し嫌悪する方向にゆるやかに向かっていると考えていいだろう(いいよな。大丈夫かな)。
オレなんか基本的に育ちが良くて素直なもんだから何を読んでも「なるほど、そういうものか」と納得してしまう騙されやすい男なのだが、それでも最近はちょっとどうかと思わされることも多い。
確か中国の雲南だったか、緑化政策とかでハゲ山をペンキで緑に塗ったというニュースがあった。2chでは中国人ってバカじゃねーのバーバーカ氏ね氏ねなどというゴキゲンなレスが溢れかえったものだが、しかしこれ、似たようなことを日本でもやっていた筈である。田舎の山道を切り開いた道路なんかで、がけ崩れ防止用にコンクリで固めた人工斜面に緑色の塗装がなされているのをオレは何度も見たことがある。たとえば絵描きの安野光雅は、ずいぶん昔の著書でコンクリ斜面を緑で着色することへの違和感を表明していた。
日本に限ったことではないだろうが、冬の芝生を緑に着色することもある。国立競技場日産スタジアムの芝がそうだ。
規模の違いやそれを緑化と言い張るか否かのニュアンスの違いはあれど、この件で日本人が中国を笑えるのかというと、オレはあんまり笑えないと思うなあ。ましてこれ、ペンキで緑化はまずいんじゃないのという中国の新聞のツッコミ記事がソースだった筈だ。中国の人々ははっきり「これはおかしい」と言っているのであって、行政がおかしなことをして世間が突っこむというのは日本でもよくある構図だ。
同じく中国が北京市で開園した遊園地、石景山遊楽園。ディズニーのキャラクターを思いっきりパクってるのが判りやすく、「これはバカにしてもOK!」とマスコミGOサインが出たのであろう、テレビのニュースでもバンバン報道された。しかし、そう無邪気にウヒャウヒャしてていいのだろうか。

日本人独自のパークを作るということを前提に協力したにも関わらず、奈良ドリームランド側がディズニーランドを模倣したことに、ウォルト・ディズニーが激怒した。模倣するに当たって、詐欺まがいのやり方で散々写真を撮った挙句、質の低い施設を勝手に作ったことが、ディズニー社に強い日本人不信の念を抱かせたという説もある。

奈良ドリームランド - Wikipedia

開園に至るまでの事情は違うし、やったのが官か民かの違いはあるものの、昔は日本も似たようなことをやっていたわけだ。それにしても晩年のウォルト・ディズニー御大を怒らせたのは凄いね。ちょっと興奮しますな。
オレが不思議に思うのは、なんで「ここ数年に限って」こういった東洋嫌悪の視線が目立つようになってきたのか、ということだ。そりゃあ確かにこのテの言説の中には頷けるものもたくさんあるし、オレだって「隣人を愛しましょう」なんて柄の人間ではないのだが、単純に「なんでだろう」と思うのである。
まあ世の中は複雑だから、こんな大きな話で原因がひとつというわけもないのだろう。ただひとつ思うのは、日本の状況そのものに原因のひとつがあるんじゃないかということだ。このところ不況不況で、皆さん夢も希望もないわけでしょう。夢も希望もない状況では自然と目線は下を向き、自分より下の存在を作ってこれを叩くことが幾分かの心の救いになるのではないだろうか。現実以上に日本を立派な国に仕立て、現実以上に東洋諸国をダメな国に考えることで、安心したいという心理がありはしないだろうか。
オレがそう思うのは、好景気に浮かれていた90年代初頭、東洋蔑視の言説など全然聞かなかったからだ。あれはあれでおかしな誇大妄想気味の時代だったけど、今は今でどうかと思うなあ。