DVDで「トゥー・ブラザーズ」。面白い映画も撮るがクソみたいな映画も撮るジャン・ジャック・アノーの動物映画。残念ながら、これはクソの方だった。
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動物の撮影は見事だが、ご都合だらけの物語を真剣に追う気になれず、お伽話としても不出来でタチが悪い。(★2)
ガイ・ピアースは密猟盗掘クソ野郎。冒頭、自分の象牙が売れずに仏像が売れるのを見て即座に仏像の盗掘に手を染めるあたり、鉄壁の銭ゲバ野郎なのである。行政長官は小悪党。その息子は幼稚な愛情を野生動物に押しつけるクソガキ。飼い犬への愛情のなさには驚かされる。知事は冷めたボンクラ息子だが、根っからのバカではないという描写がいかにも中途半端。たぶんちょっと「愛人/ラ・マン」のレオン・カーフェイ入ってる。こいつが虎を前にしてボンクラ息子の苦悩を吐露する場面、あまりの適当さに笑ってしまった。いったい何がやりたいのやら、ブレるにも程があるのである。ここにおいてジャン・ジャック・アノーは、人間を例外なく愚かで醜く身勝手に描くことで、もの言わぬ野生の虎のイノセントが観客の胸を打つだろうと計算しているのだ。これはひどく浅ましい。「子熊物語」を撮った男とは思えない堕落っぷりだ。
兄弟虎が逃亡中、行く先々で人々を驚かせるというバカみたいなくだりがある。バスを襲った兄弟虎。バスを虎に明け渡し、逃げる人々。短いカットで、クラクションを押すトラの前足。木に登って逃げる哀れなカンボジア人。ジャン・ジャック・アノーの「どうです面白いでしょう」感が耐え難い。流行りのギャグを慣れないながらも一生懸命言ってみたお爺ちゃんみたいなのだ。だいたいフランス人なんて笑いのレベル低いからな(人種差別発言)。吉本新喜劇とか観たらひっくり返って涙流して笑い転げるような連中なんですよ。たぶん。
「トゥー・ブラザーズ」にはガッカリさせられたが、幼少の頃にアニメーション「タイガーマスク」と出会ったオレにとって虎は特別に思い入れのある動物だ。学研の本で読んだノンフィクション「クマオンの人食いドラ」には幼い胸を焦がしたし、ニコライ・バイコフによる動物文学の傑作「偉大なる王(ワン)」はオレにとって聖書のような本だ。
「クマオンの人食いドラ」は1948年にアメリカで映画化されている。いつか観たいものだが、あまり期待できないとも思っている。長年オレが熱望してきたのはバイコフの密林文学の映画化である。「偉大なる王」は筆頭だが、映画化するにはストイックすぎてオレしか喜ばないかもしれない。映画化に向いているのは「牝虎」だろう。しかしこれとて北満州の密林でロケせねばならず、「デルス・ウザーラ」級の困難な企画である。誰かやってくれませんかね。
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