大晦日回顧・小川直也対吉田秀彦

小川直也吉田秀彦にバカ負けした件。試合を観たところ吉田は当然のようにPRIDEルールを熟知しており、柔道とは関係のないパウンドや踏みつけもたいへんスムーズ。優秀なやつだなと感じた。一方小川はパンチの打ち合いこそサマになっているもののテイクダウン合戦やポジショニングにおいていかにも慣れてない風情で、なんだか総合初挑戦の人みたいだった。それはいい。小川の総合戦はいつもそんな感じだったし、それだけに勝った時は痛快さが際立ってもいたからだ。

バカ負けの後のマイクでは、オレも小川という人間に感動した。シャベリのしょっぱかった小川が、あれほど流暢に喋って場を引っ張ったことが感慨深かった。対照的な吉田のド素人っぷりに苛立ちもした。しかしオレは小川のマイクにかすかに、PRIDEのリングで聞くにはどこか場違いな違和感も感じたのだ。

「おまえともっとやりたかったけど、1分1秒を大事にしたかったけどオレの足がもたなかった。ゴメン」

言うまでもなくPRIDEはガチンコのリングである。選手は1秒でも早く勝つための努力を惜しまない。それはルール以前の前提といってもいい。小川は違った。できることならもっと長く試合をしていたかった、彼はそう言ったのだ。この試合で吉田がやろうとした事と小川がやろうとした事は、まったく違っていたのだ。それがテレビ桟敷のド素人どもにどれほど届いたかといえば、どうもほとんど届いていないようでたいへん残念だ。日本人はバルセロナからちっとも成長していない。

吉田のマイクに感じた違和感についても言及しておこう。

「ここで戦ったからといって、2人は柔道が嫌いになったわけではありません。柔道があったからこそ、このPRIDEのリングに上がれたと思います。柔道が大好きです」

いったい大晦日に誰が吉田の「オレは柔道が大好きなんですよー、大好きッ!」なんて言葉を聞きたいのだろうか。これではリングサイドに居並ぶ柔道界の大物たち(古賀稔彦の大物オーラが突出していた)に媚びてるだけだ。オレは、吉田から総合を好きだ、PRIDEを好きだという言葉を聞いたことがない。「職業・柔道家」にも書いてなかった。そもそもこの人はなんでPRIDEに出ているのだろう。誰か知ってますか。

この発言もただ吉田が媚びてるだけならまだいいのだが、吉田は「柔道を愛するボクチャン」というギミックに勝手に小川も組み込んでしまった。これはオレからするといい迷惑で、まったく失礼極まりない。吉田がいる場所に、もう小川はいないのである。メチャメチャ強いけどバカだなこの人、というのがオレの偽らざる感想である。ドラフトワンばかり飲んで326の詩ばかり読んでるからバカになるんだよ。ガクトーッ!