泣く子も喜ぶお子様ランチ「ダークナイト ライジング」

巷でたいへん話題の「ダークナイト ライジング」を観てきましたよ。お客さんいっぱい入ってたよ。ネタバレありますよ。

お子さまにはよい映画ではないでしょうか (★3)
この映画には、『ダークナイト』でのジョーカーの造形に垣間見えた「本物」感は一切ない。お話は『ビギンズ』レベルの月曜ドラマランドで、クソ真面目に観てればいろいろおかしな事だらけで全然成立していない。「練りに練った計画」とやらがいいかげんにブレまくる悪役どもには、何がしたいんだコラと怒鳴りたくなる。悪党ベインが叫ぶ空虚なアジに、市民のリアクションが一切ない。生き埋めになって半年のポリ公軍団は元気いっぱいで百姓一揆。この街にはお巡りと悪党とバットマンしかおらんのか。バットマンが何を守っているのかさえピンとこないのだが、それはバットマン以前に、作り手自身が架空の街の貧乏市民なんか死のうが生きようがどうでもいいと思ってるからだろ。バットマンが監禁されていた牢獄はどこにあって、文無しでどうやって戻ってきて、隔絶された都市にどうやって入りこんだんだ。全っ然、できてない。ケチをつければキリがないけど、核爆発のくだりとかもう全部ひどい。頭悪すぎる。いい大人がシリアスな顔して観るような映画じゃねえ、子供だましもいいところだよ。

じゃあクソ映画だったかというと、わたくし実はそうでもないのであります。あのねえ、音楽とか超カッコイイのよ。空撮とかすげえキマってるのよ。バット2輪車とかイケてるのよ、急に曲がる時とか車輪が横にゴロゴロ転がるんだ、どういう仕組か知らんけど。ネコ娘なんかコスチュームがピッチリしてて、絶妙にエロいんだ。もうちょいスケベに撮ってくれてもよかったのに。

どう考えても、『ダークナイト ライジング』は穴だらけのお子様ランチだ。しかしわたくし、こんなくっだらない映画で久々にガキに戻ってワッホイワッホイ楽しんだことを白状しなくてはなりません。頭の悪いことでございます。どう考えても映画としての厚みはペラッペラの凡作なんだけど、ビジュアルとサウンド「だけ」は超傑作の風格で、当然そんなもん雰囲気だけの空手形なんだけど、それが楽しかったんだよなあ。特に、ハンス・ジマーの音楽の力は絶大だと思った。なんでもいいけどしょうもない駄作ヒーロー映画のDVD借りてきて音なしで再生して、横で『ダークナイト ライジング』のサントラでもかけてりゃすげえ面白い映画に見えると思うよ。

ただ、童心に戻って楽しんだからこそ不満だったことがある。あのねえ、ケンカに負けて大怪我した筈のバットマンがすぐに治って絶好のコンディションで戻ってくるのはダメだろう。『マッドマックス2』とか観たことないんか。マックスなんか片足ビッコで片目つぶれてアバラも折れてインターセプターも失って、ボロボロの状態で最後の闘いに挑んでタンクローリーで爆走ですよ。ああいうのが燃えるんだよ。バットマンなんか完結編でタイマン張って負けたんだから、片輪になってていいくらいだ。それで最後にどうやって勝つかなんかオレは知らねえよ、そういうのは作るやつが考えろよと、このように思いました。