「泣き虫」

泣き虫

泣き虫

誰が買ったか知らないが、職場になぜか「泣き虫」が置いてあった。仕事を終えても帰らずに読みふける。オレが持つ高田延彦のイメージは「ノンポリ」なのだが、この本を読んでもそれは変わらなかった。高田という人は、根っこの部分ではいい汗かいてうまい酒が飲めればそれで満足な人なんだろうと思っている。それは人としてまったく間違っていないし、そういう高田を好きになったり嫌いになったり好きになったりわからなくなったりしてきたのがオレのここ20数年だった。松田聖子ファンであり好きな映画が「ランボー」だった、子供子供した若手高田伸彦の面影は今もオレの胸の中にある。オレの中で高田はいまだに「好青年」なのだ。
では好青年だからタチがいいかというと、声を大にして言いたいのだが全然そんなことはねえのである。この本からは高田のタチの悪さが存分に味わえる。巷で言われるような暴露本的内容も多分に含んでいるが、オレにはどうしても高田本人に悪意があるとは思えなかった。そして悪意がないからこそ、高田はタチが悪いのである。この本は油断がならないのである。ふと、前田日明の無邪気で無防備すぎるまっすぐな悪意が懐かしくてたまらなくなった。高田がどんなに誠実に自分を語ろうと、高田とて今を生きている以上、「今」を否定することだけはできない。過去のプロレス遍歴を暴露気味に語ることはできても、PRIDEに関しては当然表の部分を語るだけに留めている。それでは本当に人の心を揺さぶる本にはならない。所詮セーフティエリア内での「誠実」なのである。その意識せざるサジ加減の向こうに見える高田の保身こそが、プロレス村の怒りを買っているのだろう。
高田と相談していた宮戸・安生が「山崎さんと中野はいらないと思います」と言ったという記述だけで、もうオレはおなかいっぱいであった。あと関係ないけど北野武の「座頭市」のポスターの「最強。」ってコピーはUインターのモロパクリだよな。鈴木健、おまえは噛みつかないのか!