これはマジで凄い本。皆さん読んでください。1970年代の
原発ジプシーの世界を描くルポなのだが、人間のメンタリティは当時から現代まで全然変わってない。日本は今も昔も、タブーが大好きな
土人の国だ。忌まわしきものの実態は隠され、誰も語りたがらない。容赦なく事態が悪化する中、自分を欺き、きっと大丈夫だと念仏を唱え続ける。戦時中と変わらない。そのような社会の薄闇は、往々にして「怪談」が発生するポイントでもある。だから
水木しげるの挿絵は、異様な迫力をもって目に刺さる。
サラリーマン漫画の戦後史
サラリーマンという戦後文化史の一面をマンガで辿ってみせてくれ、実に面白かった。この書ですべてのサラリーマン漫画の源流、とりわけ
島耕作の原型だと指摘されているサラリーマン文化の巨人・
源氏鶏太の小説を、オレは読んだことがない。ちなみにオレの親父は昔、リアルタイムで読んでいたらしい。社会の中で会社が擬似家族として機能し、上司が部下の縁談をまとめるという昭和の暗黒世界である。だって昔はさあー、
インターネッツとか
Xbox360とかなかったんだろ。だから仕方なく同僚と外で飲んで、
バーのママと不倫して、月賦でマ
イカー買って、出張がちょっとした楽しみで、ノコノコ社員旅行なんか行ってたんだろ。そんなしょーもない会社カルチャーごときねえ、自宅に
光回線さえ引いちゃえばすべて無用… 無用だッ!
五社協定と独立プロの闘いを細かく描いており、随分理不尽な時代だったのだと知る。しかし
三船プロよりも
石原プロよりも、撮影に全面協力した
熊谷組がいちばん男前に思えるのであった。