「スター・ウォーズ フォースの覚醒」と「クリード チャンプを継ぐ男」

すっかり年末でございます。今年は大晦日の朝まで仕事で、夜は友人宅でRIZIN観て年を越す予定。大晦日まで働くのはいやだけど、1年前の年越しに比べればこれでも御の字であります。なにしろ去年は仕事でタイ人の皆さんとタイ寺院で年を越し、そのまま働き詰めで2月を迎えたのだった。はてなダイアリ書いてる暇もなかったな。

わたくしの本音を言えば「フォースの覚醒」がどれほどいい映画であろうとしょせんは非ルーカス映画、むしろ世界でただひとりジョージ・ルーカスだけが作れる誰も望んでいない内容の新作クソ映画のSWとともに地獄に落ちてこそ本望、世を呪いルーカスを呪ってナンボですわという原理主義自爆テロ気分はあったのだ… これは嘘偽りなく本当にあった。

しかし、1978年のSW日本公開から長い時間が経ちました。すべてのSWを劇場で観てきたわたくしもすっかりおっさんだ。帝国の逆襲に胸を焦がした少年時代は遠くなり、記憶の彼方に滲んでいる。SWを買ったディズニーは特別に気に入らないコングロマリットなれど、それでも人々が笑顔でSWを楽しめる時代が来たのであればおっさん何も言うことあらしまへん、老兵は去るのみ、ええがなええがな、レイア・オーガナというのもこれまた正直な気持ちなのであります。「ピープルVSジョージ・ルーカス」のクローン大戦は終焉を迎え、我ら元老院議員たちは泥沼の「ピープルVS庵野秀明」でも死ぬまでやっとればええんです。

いやあ「フォースの覚醒」楽しかったですねえ。登場シーンからしてレイちゃんはナウシカですよね。あの何に使うんだかよく判らぬ棒、あれ要するに風使いの杖でっしゃろ。次作ではナギナタ状にライトセイバー化、そんでダークサイドに堕ちてレイちゃん大立ち回り、首チョンパ腕チョンパ、杖一本でトルメキア兵皆殺しや。そこに老ルークがブワーッと飛んできて「双方動くな」ですがな。「あの男、スカイウォーカーです」「知っとるわ!」言うてねえ。ま、こんなヨタを吐くのもSW特有の楽しみのひとつです。それからフィン君が以前に出てた「アタック・ザ・ブロック」は佳作なので、皆さん観るといいですよ。

クリード チャンプを継ぐ男」は、アメリカ映画を代表する人気シリーズの7作目という共通点こそあるものの、「フォースの覚醒」とは根本的に違う性質の映画だ。シルベスター・スタローンが「ロッキー」を他者に売ることは金輪際ない。スタローンは異常に面倒見のいい男で、今まで多くの若い監督や若い俳優、若くない消耗品どもにチャンスを与えてきた。彼自身がメシも食えない状況からチャンスを掴んでのし上がった人間だからなのだろうな。今回の映画は若手監督による企画・脚本・演出ではあるが、スタローン自身は世界トップクラスの脚本家であり監督でもあり、彼がOKを出した作品ならまず大丈夫だという信頼はあった。実際観てみたが思った通り。「ロッキー」らしくシンプルで、愚直で、骨太な、本物の映画だった。アポロの奥さん、ミセス・クリードには高度な演技が求められるので今回演者が変わっていたが、これは仕方なかったのだろうな。まー似てたからいいや。

クリード」は、我々が「ロッキー」を観ることで知ったもののまだ行ったことのないフィラデルフィアという街の魅力にあふれており、全編ほぼずっと楽しい映画だ。しかし、楽しいばかりではロッキー映画にならないのも周知の事実。かつてロッキーが自分がただのゴロツキではないことを証明したように、クライマックスには、主人公にしてアポロの子アドニスという人間の本質、彼の、彼だけの動機が露わになる場面がある。我々はその瞬間に立ち会い、感動する。斯様な胸打つ「真実の瞬間」がひとつ、たったひとつあるだけで、それは忘れ難き映画になるんだよな。それからアドニス君が以前に出てた「クロニクル」もなかなかの佳作なので、皆さん観るといいですよ。

絢爛お祭り映画たる「フォースの覚醒」の多幸感、「クリード」に灯る人生の小さな真実。いやー映画ってホントいいもんでして、とても充実した、いい年末でしたよ。それに比べてなんですか、RIZINですか? …I have a bad feeling about this.