意外や楽しめた「未来のミライ」

今ごろレンタルBDで「未来のミライ」。細田守監督は「時をかける少女」は気に入ったものの、以後の作品はどれも気に入らず嫌いな監督の部類だった。さらに「未来のミライ」は世評も非常に悪かったので、腹立つんだろうなあと思いながら観てみたところ、意外やけっこう楽しめてしまった。

「未来のミライ」スタンダード・エディション [Blu-ray]

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インテリ幼児プレイ (★3)


話はほぼ連作コント。内容がクソしょうもなくて、正直言って楽しく観られた。細田守らしい歪みも勿論あって、横浜市磯子区にオシャレなだけの欠陥住宅を新築する悪徳建築士とか、尻穴に尻尾を突っ込んで小児性欲に目覚める肛門期の幼児とか、JK妹のクソしょうもないツンツン攻撃に内なる獣が目覚める幼児とか、劇団イヌカレーのできそこないのようなJR東日本駅員とか。あっこれマジメに観なくてもいいやつだ、と観てる側のオレの脳もいきおい幼児化しまちゅ。


冒頭、横浜の空撮カットには息を呑む。ただのパンダウンと思いきやカメラは浮遊しており膨大な住宅群が3Dで浮かびあがってくる。ただ細田監督、出来がいいからって何度も何度もこれやるんだよな。君そういうとこあるぞ。気をつけていただきたい。


前作「バケモノの子」では、登場人物が突然テーマめいたセリフを深刻ぶって読みあげる(文字通り、セリフを読んでる感じにしか受けとれない)場面で鼻白んだものだった。今回もJKが同じようなことをやるんだけど、びっくりするほど普通の内容を適当に喋ってるだけで、そもそも話がクソしょうもなさすぎるので耳障りにすらなってない。なにしろ脳が幼児化してるから気にならない。


今回も白バックでパラレル時空の系統図みたいなのが出てくる。つくづく細田守は「図式」の作家だ。図にすれば君たち愚民にも判るでしょ、ホーラあっちにパン、こっちにパンですよ的なイヤミが常に作品にまとわりつく作家で、実は図式でしか世界や人間を理解できないのは細田守自身であるような雰囲気も濃厚で、オレはあんまり好きじゃない作風なのだけど、今回みたいなクソしょうもないコントでも頑なに図式やるんだ、やっぱりケモナーやるんだJK出すんだ赤ちゃんフニフニするんだ、ここまでくるとなんだか細田監督の「業」のようなものを感じてあんまり腹も立たなかった。しかしアニメ業界でもかなり頭よさそうな細田監督が、愛されない作品を連発した挙句にたどりついたのが幼児でちゅアバババの境地とは、やっぱり業の深い人なんだなと思いました。