「蟻の革命」

蟻の革命―ウェルベル・コレクション〈3〉 (角川文庫)

蟻の革命―ウェルベル・コレクション〈3〉 (角川文庫)

角川文庫で復活したウェルベルの蟻サーガ第三作。
正直に言って、「蟻」「蟻の時代」ほどの面白さはなかった。96年の発表後すぐに訳してくれていたらそうでもなかったと思うのだが。読んでいてなんとなく「まとめに入ってるな」と感じられたし、こんな感じは展開予測がまったく不可能だった前作や前々作ではなかったことだ。『蟻の革命』で描かれた「コミュニケーションの道具としてのインターネット」の姿が早くも古くさく見えてしまったのは象徴的だった。まったく、コンピュータがらみの描写は作家がいくら気をつけてもキリがない。現実が虚構をどんどん追い抜いてしまう。同様に今作は読者との距離も不安定だった。ある部分ではついていけないと感じ、ある部分では読者が作品を追い越しているのを感じた。本来このシリーズは時間に劣化される物語ではなく所謂「生(なま)もの」ではなかった筈なのに、主題をまとめるために「生もの」の領域に踏み込んできており、それがために失敗しているのだ。まあ、そうはいっても相当面白かったんだけどなあ。でも期待ほどではなかったかなあ。
ところで、角川文庫では巻末の解説文を以下の面々が書いている。

  1. 「蟻」 養老孟司
  2. 「蟻の時代」 高畑勲
  3. 「蟻の革命」 小谷真理

これは順番が逆だろ! だんだんスケールダウンしていってどうすんだ。

蟻―ウェルベル・コレクション〈1〉 (角川文庫)

蟻―ウェルベル・コレクション〈1〉 (角川文庫)

蟻の時代 ウェルベル・コレクション II (角川文庫)

蟻の時代 ウェルベル・コレクション II (角川文庫)