「映画秘宝」

キング・コング」特集。
どれだけ1933年のオリジナルに近いストーリーであろうと、3時間という尺とピーター・ジャクソンの作家性と人間性から考えるにこれは33年版の如き「神話」にはなり得ないのではないかと思われる。人間からコングに向けられる嫌悪と好奇の視線、その残酷が彼の映画に存在するとは思えないのだ。ジャクソンはゴキゲンな悪趣味監督ではあるが、やはり善意の人だ。人間と怪物を、心から愛している人だ。しかし33年版「キング・コング」はヒューマニズムを超えたところにある。愛だけで33年版は作れない。
だからといって期待してないわけでは全然なくて、「ピーター・ジャクソンキング・コング」をオレはたいへん楽しみにしている。しかし指輪の前のような高揚感はなく、複雑な気分でいるのは確かだ。オレはジャクソン解釈の「キング・コング」を33年版のリメイクというより、かつて死ぬほどたくさん作られた亜流コング映画の中で最も期待できる映画のひとつとして観ようと思う。