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- 『タイガーマスクに土下座しろ!』(著・河崎実)より、最終回周辺部分の批評を抜粋して引用
タイガー=ザ=グレートとタイガーマスクの死闘。それはその恐るべき残酷さにおいてTVアニメ史上の金字塔である。いや、実写のTV映画を含めてもこれだけの暴力シーンの洪水の作品は皆無だ。
第105話「去りゆく虎」は、人間として生きて来たなら見る義務がある、それほど決定的な作品である。何故ならアニメーションという単なる絵の連続が、生身の人間の映像を超えた奇跡を生みだしたのだから。「巨人の星」において花形満が星飛雄馬の大リーグボール1号をホームランするシーンもアニメが実写を超えた瞬間だったが、こちらは全編イッちゃってる。迫力の嵐だ。
これは一見演出家の気が狂ったかのように見えるが、その通りだろう。あらゆる創造物で優れたものは、多かれ少なかれ狂気を含んでいるものだ。もはや、暴走するこの番組を誰にも止める事は出来ない。
筆者が今までの人生で見たあらゆるアニメ・特撮・そして普通のドラマ作品の中で、これは気合の入り方が最高に近い。おそらく人間の表現のエネルギーを限界まで絞りだした結果だ。
この演出家の命が心配だ。冗談ではない。「ウルトラマン」シリーズで常人の何倍ものエネルギーを使い消費した金城哲夫、円谷一はいずれも短命、手塚治虫の虫プロで「鉄腕アトム」以降の異常なグレードのアニメを製作していたスタッフも四人があまりに作品に命を込め過ぎたため「戦死」している。
「タイガーマスク」のこの最終回周辺も、そういう「人間の限界」を示した作品、作った人間の命が入っているという迫力がギンギン伝わってくるのである。
この異常なグレードの高さは人類が太古の昔から創造してきたモノの中でも最高峰に位置すると言っていいだろう。
- 作者: 河崎実
- 出版社/メーカー: 風塵社
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