原作小説は知らないのだけど、登場する東京都知事のキャラクターが突出して平松キャラになっており面白い。いくらなんでも原作ではこんな人じゃないだろうと思わせる、平松テイスト満載のキャラクターなのだ。
この漫画の主人公は地震予知を研究している青年で、東京直下型地震を予知した主人公は都庁に赴いてその事実を東京都知事に報告する。報告を聞いた都知事、
この都知事は江戸っ子で、いつもべらんめい口調なのだ。てやんでえ!
東京を襲った地震と二次災害の後。首相官邸に乗り込んだ都知事はなぜかチョンマゲ頭にカミシモ姿。気合の入りすぎた遠山の金さんのコスプレ姿なのだ。
彼は地震対策を怠ってきた政治への怒りを、自戒もこめつつ首相に直接ぶつけるのであった。
諸肌脱いじゃっていくらなんでも面白すぎるのであるが、オレは平松伸二のこの愚直さ(有体に言えばバカさ)は支持したい、支持してあげたいなあと思う(偉そうな物言いだけど)。
平松伸二という作家は、何でもかんでもそのまんま漫画に出してしまう人だ。ノーパンしゃぶしゃぶに通う堕落した官僚に腹が立ったら、漫画にノーパンしゃぶしゃぶに通う堕落した官僚が本当にそのまんま出てきてマーダーライセンス牙に懲らしめられる。そんな漫画ばっかりである。言いたいことがあったら登場人物がそれをそのまんま代弁する。子供みたいだ*1。
これは作劇としては、決して褒められたものではないかもしれない。昨日読んだ「ハチクロ」なんかはきちんと巧妙に作りこまれた漫画で、そりゃそれはそれで評価されて当然だけど、だからといって平松先生のこの愚直さ、工夫のなさが胸を打たないかといえば、これは胸を打つのである。
なぜなら漫画を読むのはいわゆる「漫画読み」の皆さんたちだけではないからだ。たとえば床屋の待合でオッサンがなんとなく手にとって読む場合であれば、ハチクロ的ドラマツルギーよりもこの江戸っ子都知事の絶叫のほうが読者に作者の主張が「届く」可能性は強いのではないかと思う。そして、漫画は「漫画読み」ばかりが支えているのではなく、長年にわたって床屋のオッサン的大衆が支えてきたジャンルではないかとも思うからである。
とにかく都知事の印象は強烈だった。この江戸っ子都知事の印象が強すぎて、読了後は地震のことなんか全然覚えてないもんなあ(それはダメだろ)。