「エースをねらえ!」 山本鈴美香

id:Dersu:20050120以来の再読。やはり死ぬほど面白い。実に多層的な面白さのある漫画だ。

今回特に感じ入ったのは、岡ひろみをはじめ藤堂や尾崎、お蝶夫人らが地方巡業をする場面だ。全国を巡ってモノホンのテニスを啓蒙→日本でのテニスの底辺が広がる→才能ある若者が出てくる→世界に挑戦、という日本テニス界の野心をきっちり描いているのである。物語の前半、藤堂や尾崎やお蝶夫人らは岡を世界レベルのプレイヤーに押しあげた。物語の後半では、彼らはまだ見ぬ若き才能のための捨て石となる覚悟を固める。作者は、この覚悟の尊さを十二分に描いている。彼らの覚悟をかけがえのない踏み台として、岡は世界へ羽ばたいてゆく。
エースをねらえ!」は表向きはテニスプレイヤーの世界を描いた漫画なのだけど、一方ではプレイヤーを支える裏方たちの「志の連鎖」を描ききった弩級の大河ロマンだ。ジャンルを支え世界を目指す志は竜崎理事(お蝶のオトン)から宗方コーチ、桂コーチ、藤堂、尾崎、お蝶へと綿々と繋がってゆく。これはやっぱりド凄い情念の漫画でありました。