HERO’S・代々木第一

前半を見逃した。
山本”KID”徳郁シャイニング・ウィザード宮田和幸を4秒KO。確かにこれ鮮やかでKIDさんの神の子感もただごとではないのだが、オレはこういう一方的な試合を観るといつも敗者の気分になってしまう。今回なら宮田である。宮田なんて選手のことはほとんど知らないのだが、前回の試合はド強い感じだったのでこれは面白くなるなと思っていたのだ。宮田にとってもKID戦は大一番、激しい練習を乗り越えて気合充分だったと思われる。オレには、入場してゴングが鳴るまでの宮田の表情は自信に満ちているように見えた。TBSはKID一家の応援を映すけど、宮田の家族だって、そりゃタレント性はないかもしれんがどこかで宮田のことを応援していたに決まっているのだ。
でも4秒、シャイニング・ウィザード
これが藤波に丸め込まれてフォールされた故・橋本だったらロッカー蹴飛ばして「コノヤロー再戦だ! サンセン!」と叫ぶだろう。そして次のシリーズ最終戦では、本当に再戦が組まれるだろう。そして橋本はドラゴンを蹴っ飛ばすだろうし、藤波も今度は大人しく蹴っ飛ばされてくれるのだ。
ところが、たぶんKID宮田の再戦はない。またどっかのトーナメントで当たるとかしない限り、組んでもらえそうもない。この4秒KOは「尋常の勝負」であったという前提を覆しては格闘技の根幹が揺らいでしまうからだ。それも判る。
ところがオレはこのカードの再戦を観たいのである。そしてもしそれが面白かったら、その後も何度でも同一カードを組んでほしいと思っている。4秒KOという現象が凄いのではない。この4秒KOから巨大な物語が始まりうるから、結果的に4秒KOが凄くなるのだ。早い話が「遺恨」なんだよ、「遺恨」! せっかくKIDが「ヤバイ、カッコよすぎるオレ様ちゃん」と言ってくれるんだから、あとは宮田が恥知らずに「再戦だ! サンセン!」と叫べば遺恨はスタートするしブルースは加速していくのだ。最悪試合が組まれなかったら、宮田が新宿伊勢丹前でショッピング中のKID一家を襲えばいいのだ。あとKIDのベルトを盗んで逃げるとか、馳のスープラを金属バットでブッ壊すとか馳をカナダの池に叩き落すとか、方法はいくらでもあるよ。
しかしおそらく、そうはならない。オレにも最近やっと判ってきたのだが、なぜか格闘技の人たちはそういうことをしない。みんな真面目だ。オレからすると、それって本当かよ、と思うのだ。格闘技選手全員に崇高なる格闘理念があって一切ブレません、そりゃちょっと信じがたいんだよなあ。
とにかくオレはKIDと宮田の物語の続きを観たくなった。今後宮田の試合を観ても、そこにはKIDの影が落ちている。「いつかKIDと再戦するために試合をこなす宮田」として観てしまうだろう。