Dynamite!! 田村vs桜庭

あけましておめでとうございます。今年もほどほどに頑張っていきたいと思います。

晦日Dynamite!!は自宅で友人たちとアナログ地上波観戦。

田村潔司vs桜庭和志について書くことは、実はあんまりない。このカード、発表から試合当日までノイズが多すぎた。桜庭の「素手でやりましょう」発言から始まったノイズは、Uインター時代の3連戦がガチだったのヤオだったのの検証にまで至った。

この段階で、オレはかなり不愉快だった。時機を逸した賞味期限切れのこのカード、いくらインタビューしても本音を吐かない2人、テレビ桟敷に伝わりにくい数十年の因縁、それでもなんとかメインディッシュとしておいしくいただけるように工夫しようと、主催者とテレビとマスコミと桜庭と田村がそれぞれバラバラに四苦八苦した結果なのだと思う。

そうもいかない事情が山盛りなのは重々判っているが、市井のプオタの我儘を書くならば、このカードは腐った料理を腐った料理としてそのまま出すべきだった。腹を壊して苦悶のうちに年を越す覚悟の者だけがこっそり観るカードとして、メイン以外のどこかで行なうべき試合だった。なんだったらケロちゃんが前口上で「どくいり きけん たべたら しぬで! 60分1本勝負を行ないます」と謳ってもよかった。

胸が痛くなるような試合が終わった後、田村と桜庭はリング上で握手を交わし、なにやら話し合っていた。桜庭の「またお願いします」という言葉をマイクが拾った。正直言って、こんな場面オレは見たくなかった。

こんな時どうしてもオレは、かつてのアントニオ猪木を思い出してしまう。猪木はどうしようもない袋小路に追い込まれたとき、「毒入りじゃー!」とばかりに開き直ってひどく後味の悪い試合をした挙句、ヨダレを垂らしながら観客にウンコ投げつけて退場し取り残された観客を呆然とさせるケースがたまにあった。後日猪木はシャアシャアと「まあこれもひとつの闘いの原点というか。ムフフ」などと禅問答で煙に巻き(ひでえ)、観客の心に解けない知恵の輪を残していった。猪木を観続けてきた観客の中には、いまだに解きようのない幾つもの知恵の輪がゴロゴロと転がっている。

田村も桜庭も、客がひくほどの感情をリング上でさらけ出せる男ではない。田村も桜庭も、自分からスキャンダルを爆発させるような男ではない。だから試合はあのようになり、2人の間には握手が交わされた。オレは2人を責められない。責められるわけがない。だがそれでもオレは、あたかも知恵の輪が解けたかのようなそぶりさえ見たくはなかったのだ。それはウソだと、オレは思う。試合が終わってから、ようやくそのことに気づいた。

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