なぜ作る 「シン・仮面ライダー」

庵野秀明監督作品「シン・仮面ライダー」を観てきましたよ。わたくし仮面ライダーは全然興味なくて、ちゃんと観たのが先日の白石和彌監督の「仮面ライダーBLACK SUN」のみ。あれにも結構な文句があるけど、少なくともやりたいことは伝わるし、3割くらいは好きな気持ちもある。庵野秀明の「シン・仮面ライダー」はオタク宴会芸としてもクォリティ低いと思ったが、出来不出来を度外視しても何がやりたいんだか不可解な映画だった。以下、ネタバレあるような気がしないでもない感想。お好きな方はごめんなさい。

本編じゃない「プロモーション映像A」より

なぜ今この映画を作るのか、核となる動機がほとんど見えない。好きな仮面ライダーを東映が「やらないか」と言ったからホイホイ作っちゃったのか。 (★2)

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「ベネデッタ」 史上最高のプロレス映画

おはよう諸君。バーホーベン先生の新作が少し遅れて高松で公開されたので観てきたよ。これ、正式に18禁映画なんだなあ。オレは全然、子どもに観せてもいいと思うけどなあ(エロいことはエロい)。

網膜剥離の手術から日が浅く、右目にはまだガスが入っている(抜けてない)ので、映画を観るコンディションはあんまりよくない。まあ、そんなのお構いなしにバンバン観てるけどな。以下、ネタバレありの感想。観てない人は読むべからず。今年の暫定ベストです。

ベネデッタ 豪華版  [Blu-ray]

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  • ヴィルジニー・エフィラ,シャーロット・ランプリング,ダフネ・パタキア,ランベール・ウィルソン
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坂口征二とアントニオ猪木(右)

凄い映画。バーホーベンはキリストさまの手に負えねえ凄玉。これが一周廻って人間讃歌なのが凄い。 (★5)

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「すずめの戸締まり」 フィクションと現実、そしてクイズ

出崎アニメみたいな坂道レイアウト

新海誠先生の最新作、「すずめの戸締まり」を観てきたよ。わけあって2回観ました。以下、CinemaScapeに投稿したクソ長いネタバレ感想。ネタバレ度が高いので、まだ映画を観てない人は絶対に読まないでください。いっそ映画を観た人も読まなくていいです。とんでもなく的はずれなことをあれこれ書き連ねてしまったのかもしれないが、書いてるうちにもう何がなんだか自分でもわけが判らなくなってしまった。前半はヨタ話、後半が映画本編の感想となっております。だいたいその筈です。あ、新海先生の小説版は読んでません。そのうち読むと思います。

甘いなぐさめ など今は  ★3

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猪木ゆく

10.1に猪木が死んで、なんとなく心ここにあらず状態で2週間ほど経った。数年前から覚悟していたので、訃報そのものに驚きはなかった。生前葬もやってたしなあ。年とって病気で死ぬなんて、非常識な猪木にしては常識的だ。しかし自分にとって猪木のいない地球ははじめてなので、戸惑いはある。まるで別の星に来たみたいだ。

猪木評を書く気もないし猪木の記憶を書く気もしない。褒める気もけなす気もしない。他の人の文章なら読みたい。自分如きは胸に風穴の空いた、たくさんの人たちの中のとるに足りぬひとりにすぎない。悲しいとも安らかに眠れともなんとも思わない。ただてめえのブログの最新記事がいつまでも安倍晋三のおもしろおかしいやつのままなのもアレなので、更新しておきます。

わたくしと安倍と暗殺とカルト

安倍晋三暗殺とその後の10日間について、自分の気分を自分の視点で書いておこうと思う。言うまでもなく、こんなもん書きなぐったっていいことなんかひとつもないのだ。罵倒され馬鹿にされ嫌われるのは明らかで、繊細なボクチャンの心はズタズタに傷つくだろう。それでも書くのは、1年もすればこの時期の記憶など全部忘れてしまうに決まってるからだ。たとえばオレは去年のオリンピックのことなど何も覚えてない。東海に現れた現代の妖怪、怪奇メダルかじり男しか記憶にない。かじられたメダルが何の競技のメダルなのかも記憶にない。この記事は後で自分で読んで、ああこの時オレはこんな気分だったのか、と知るためのものだ。じゃー非公開でもいいのだが、それもつまらない。

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時代の気分、子供の不在 「シン・ウルトラマン」


「ウルトラマン」はオレにとって大切な作品で、そっとしておいてほしいのである。オレは各ウルトラシリーズをちゃんと観てない、というか全然観てないが、「ウルトラマン」は大切な作品だ。とりわけ「故郷は地球」、「空の贈り物」、「怪獣墓場」が好きだ。

ハッキリさせておきたいのは、オレが「シン・ウルトラマン」を是非作ってくれと願ったわけでは全然ないということだ。できればやらないでくれと思っていた。しかし連中は作ってしまった。だから仕方なく、イヤイヤ観たのである。えっ、じゃあ観なきゃいいんじゃないのと仰る方々に、「仕方なくイヤイヤ観る」理由を説明する言葉をオレは持たない。オレも全然判らないのだ。でも仕方ないから観た。映画館に行くのもホントに憂鬱でねえ。以下感想だが、ネタバレあるので映画を観てない人は読むなよということ以上に、申し訳ないがこのように心のネジ曲がったクソ野郎の感想なので読まぬ方がいいですよと言っておきます。

極めてよくできた同人映画だが、オレのマンじゃない。 (★3)

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「英雄の証明」 社会のバグと、愚かで悲しい我々

どうしてこんなことに

徳島に密航して、アスガー・ファルハディ監督の新作「英雄の証明」。10年くらい前にファルハディ監督の「別離」を観て、なんだよなんだよイラン映画ってこんな達人が映画作ってんのかよ、と驚かされたものだ。今作は昨年のカンヌ映画祭で、あたりまえのようにグランプリを獲っている。以下感想だが、ネタバレを避けたいので内容にはあんまり触れてない。何はなくとも映画を観ていただきたい。ええーイランの映画でしょー、そんなの面白いのかよーと思われるかもしれないが大丈夫。ほとんどの映画よりは面白いよ。

アスガー・ファルハディの語り口はまるで名人の落語のよう。死ぬほど見事なラストシーンが典型だが、映画基礎体力が高すぎる。この人が作ったら、どんな話でも面白くなってしまうのではないか。 (★4)

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「牛久」 我々は税金を払っている。彼らが殺されているのに(追記あり)


この1年ほど待ちに待っていたドキュメンタリー映画「牛久」をようやく観た。当初は「牛久 比類なき不正義」というタイトルだったが、サブタイトルは削ったようだ。以下、Cinemascapeに書いた感想。

良心的納税拒否をしたくなる

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「白い牛のバラッド」 It's hard out here for a widow.

イランでは上映禁止。ホラー映画の「各国で上映禁止!」じゃなくて、マジのやつ。

イラン映画の「白い牛のバラッド」。極東の島国の田舎にいながら、行ったこともないイランの問題を我が事のように感じられる。こういうのが映画のいいところだよなあ。淀川さんもそんなようなことを言ってた記憶がある。ネタバレ厳禁の映画なので、観てない人は以下の感想を読まず、まず映画を観てください。読むなよ絶対読むなよ!

白い牛のバラッド(字幕版)

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  • マリヤム・モガッダム
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なんせ過酷なんよ (★4)

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映画「香川1区」 未来は先の見えないハイウェイ

長いけど、前作の感想を貼っておく。今作の感想はもっと長いのだが。

pencroft.hatenablog.com

またしても自分語りになるのを平にご容赦いただきたい。前作は「わたくしが高松にいなかった17年」を描いた作品だった。しかし今作は「わたくしが高松で暮らす中の直近の1年」を描いている。その映画が高松で公開される。これはやはり興奮せざるを得ないのであります。

文化果つる辺境の地・香川県には現在、一般映画館は4館しかない。2スクリーンのミニシアター「ホール・ソレイユ」と、7~9スクリーンの「イオンシネマ」が3館(高松東、綾川、宇多津)である。あとは成人映画専門の「ロッポニカ」(この響きにグッとくるのはおっさんだけだろうな)。「香川1区」は2022年1月21日、県内の4館すべてで同時公開された。これは極めて異例の事態である。さて香川1区に住むオレは当然香川1区にある映画館で「香川1区」を観ようとしたのだが、上映時間がオレとはイマイチ合わず、仕方ないので香川2区にあるイオンシネマ宇多津へ足を運んでこの映画を観た。なんじゃそりゃ。以下、Cinemascapeに書いた感想。

極限の重圧の中に現出する、おっさんたちの青春映画 (★4)

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淡くて薄くて不鮮明 「サマーゴースト」

知った瞬間からこれ絶対ヤバい物件ですよ欠陥住宅ですよとウヒウヒ騒いでいたアニメ「サマーゴースト」。我ながら性格悪いとは思いつつ、ufotableCINEMAで観てきました。ストーリーは各自調べてください。尺は40分で、鑑賞料金は1300円。観終わって、1300円はどう考えても高い、せいぜい600円やと思いました。

ラノベ絵師loundrawさんの商業初監督作。ハッキリ言って銭とれるレベルではないが… (★2)

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